日本記念日協会(※1)に登録されている今日・6月2日の記念日に、「おむつの日」がある。
あむつを通じてすべての赤ちゃんの幸せで健やかな成長について考えてもらおうと、赤ちゃん用の紙おむつ「GOO.N(グ~ン)」を製造するエリエール大王製紙株式会社(HP)が制定したもの。日付は6月2日で「062」を「おむつ」と読む語呂合わせから.
冒頭の画像は、エリエール大王製紙のベビー用紙おむつテープタイプ「グーン はじめての肌着 BIGサイズ 52枚」である(ここ参照)。
大王製紙は、Wikipediaでは、紙・板紙の生産量は約245万トン(2009年[平成21年])であり、生産量基準で日本国内では日本製紙・王子製紙・王子板紙に次ぐ国内第4位の規模を持つ(※2ここ参照)。紙パルプ関連の連結売上高(その企業グループの売上高)を基準とすると世界で第20位、国内では王子製紙・日本製紙グループ本社・丸紅・レンゴーに次ぐ第5位(※3のここ参照)。洋紙では新聞用紙・印刷情報用紙・包装用紙・衛生用紙(※4も参照)、板紙では段ボール原紙などと、製品は多岐にわたる。このうち衛生用紙は生産量基準の国内市場占有率(シェア)が約15%で首位(『日経市場占有率』2011年版、日本経済新聞社、2010年)となる。・・・そうだ。
ティッシュペーパーやトイレットペーパーのほか、ベビー用紙おむつ、大人用紙おむつ、生理用品、ペット用品など幅広い家庭用生活用品(衛生用紙)のブランドとしての「エリエール」のことは、スーパーの店頭などでも良く商品を見かけるので知っていたが、それが大王製紙という会社の製品であることは知らなかった。
大王製紙は、「製紙工業企業整備要綱」(1942年9月4日付商工省通牒)に基づき、四国紙業など14の企業が合同して1943(昭和18)年に和紙の製造販売を目的として設立された。当初は和紙の製造・販売に従事していたが、戦後の1947(昭和22)年から洋紙の製造も開始したという。
残念ながら紙の業界のことなどについてはあまり良く知らない私が同社の名前を知ったのは、2011(平成23)年の大王製紙事件が、マスコミで大々的に報道されてからである。当時色々と企業のコーポレート・ガバナンスが問題にされたが、この企業の場合それ以前に上場企業には珍しい複雑な連結会社の状況、(グループの資本構造)にあったようだ(※5参照)。いずれにしても、同社にとっては、大きなマイナスイメージが広がってしまったよね~。ただ、そんなことは今回のテーマではないので本題に戻ることにしよう。
「あんたは若い人にしちゃ世話のかからない人だね。いつも家の中はきちんとしているし、よごれ物一つ溜ためてないね」
「そりゃそうさ。母親が早く亡くなっちゃったから、あかんぼのうちから襁褓(おむつ)を自分で洗濯して、自分で当てがった」
岡本かの子の 『老妓抄』(※6青空文庫参照)より柚木(ゆき)という青年と老妓の会話を引用したものである。
現在使われている「おむつ」は、「おしめ」とも呼ばれるが、排泄物(尿や便)を捕捉するため下腹部に着用する布や紙のことであり、特殊な使用例は別として、通常は、主として、赤ちゃん(乳幼児)や一部の高齢者・障害者・入院患者など、排尿や排便を自己の意思で制御できない者や、体の自由が利かないためにトイレに行くことが困難な者が使用する。また、普段はトイレで用を足せるが、失禁・過敏性腸症候群・夜尿症などを患っている人の対策としても使われる。
この「おむつ」の漢字は「襁褓」と難しい字を書くのだが、これは古来よりの言葉「むつき(襁褓)」の語頭に「お」を附けて、語尾を省略して作られた女房言葉だという説がある。
「襁褓」の漢字「襁」は「衣+強」で「丈夫な」「強く締める」の意味があり、音読みはキョウ(漢音)、訓読みは、おびひも(帯紐)、おう。意味は、おくるみ、子を背負うときの帯紐、子を背負う、という意味がある。〔説文解字・巻八〕には「兒を負ふ衣なり」とあり、子を背負うための帯紐のことをいうそうだ。
また、「褓」は、「衣+保」で、「包む衣」「くるむ衣」の意味があり、〔説文解字〕の本字は緥(糸+保)で、説文解字・巻十三に「小兒の衣なり」とあるから、赤子をくるむ衣、おむつ、かいまき、という意味があるようだ(※6参照)。
『源氏物語』の作者とされる紫式部が書いた『紫式部日記』は、彼女が仕える藤原道長の娘で一条天皇の中宮彰子の出産が迫った寛弘5年(1008年)秋から始まるが、この『紫式部日記』を元に制作された絵巻物『紫式部日記絵巻』というものがある。
その中の、現在残っている旧森川家本第三段(現在:東京国立博物館蔵。重要文化財)に、敦成親王(後の後一条天皇)の五十日の祝儀(誕生50日の祝)の場面が絵詞(えことば)と共に描かれている。
上掲の画像がそれであり、寛弘5年11月1日(1008年12月1日)夜、親王の外祖父道長が五十日の餅を差し上げる場面であり、若宮(敦成親王)を抱くのは道長の北の方(鷹司殿 倫子)、手前は道長、後向きの女性が中宮(彰子)である。e国宝に画像と解説があり絵も拡大画像で見れる。ここクリック。
この絵の北の方が抱く若宮(敦成親王)が着ているものを見てどう思われますか。現在でいうおむつなどではなく細長い着物(産着)を来ていますね~。それにしてもずいぶんと丈が長い。平安時代の貴族の間で使われていた「産着細長(うぶぎのほそなが)」という装束だそうで、細長いので「細長の袍(ほう)」と呼ばれる長い衣の下に、白い単衣を重ねたものだそうだ。世の中には、色々と調べている人がいて、当時の産着を調べている人もいる。以下参考※8:「やえむぐら草子」のホームページを見るとよい。そこでは実際にその衣類を作って実験している写真も掲載されている。
このように「むつき(襁褓)」は、当時の貴族社会などでは乳幼児の産着を指していたようであるが、「むつき」は、「大」「小」の2つの部分に分かれており、「大きいむつき」で赤子の体全体をくるみ、「小さいむつき」を股間にあてて利用していたようだが、やがて赤子の身体全をむつきで覆う習慣がなくなり、股間を覆う布だけが排泄を処理する目的で残り、その股間にあてる布のことを、「お湿し」とも呼ぶようになった。そして、この「お湿し」の女房言葉が、「お湿(おしめ)」であり、その後「おしめ」と混同されて使われるようになったようだ。現在でも「襁褓」と書いて、「むつき」「おむつ」「おしめ」などと読んでいる。「むつき」の語源は他にも、「身(む)」助詞「つ」「着(き)」とする説や、1反(段とも書く)の晒(さらし)から6枚分のおしめが取れることから「お六(おむつ)」と呼ぶようになったとする説などもあるが確かなことは不詳なようである。
貴族などとは違って、一般の平民にとっては大人になっても衣服すら足りていない状態で、乳幼児の排泄物処理に布きれをつかうようになったのは、江戸時代からだといわれるが、それまではなにも着用はしていなかったのだろう。洩らせば、汚れたところをふくぐらいのことであったろうと推察する。
江戸時代になって、赤ちゃんには小便布団という一尺(約303.030 mm)四方の布団を敷いてもちいたようだという話を聞いたことがある。布団と言っても布きれであったかもしれない。 この時に排泄物を受けるための布から、現在の布おむつに発展したとすれば、私など庶民の間では、このような排泄物で濡れ、湿った布を「おしめ」と呼ぶようになったという方が本当かもしれないという気がする。
ただこれも、豊かになった江戸時代も末期ぐらいから、それも、経済的に恵まれた階層で使われ始めたのではないだろうか。なんといっても、江戸時代は、まだまだ「布」はとても貴重な品であった。おむつには、使い古された衣類や浴衣などをほどいて作っていたようだ。特に浴衣は吸汗性に優れた素材でできているため、使い古された浴衣の生地は赤ちゃんのおむつとして最適だっただろう。
そして、一般的な家庭でも布おむつが使われるようになってきたのは明治末から大正時代になってからだと聞いている。当時は使い捨ての紙をおむつとして利用するより、洗って何度でも使える布おむつの方がずっと経済的であった。実際、昭和になっても戦後しばらくまでは、各家庭で綿の古着やさらし綿で作られた輪形・長方形の布おむつが主に利用され、小さな子供多くがいる家庭の庭では沢山の布おむつが干されている・・・、というのが定番の光景だった。1958(昭和33)年〜1959(昭和34)年頃 乳幼児の布おむつレンタル事業が開始されたという(※9参照)。
今では、主流となっているのが「紙おむつ」。世界で最初の紙おむつは、1940年代の半ばにスウェーデンで誕生した。当時、ドイツによる経済封鎖を受けていたスウェーデンでは、綿が不足し、赤ちゃんの布おむつが間に合わない状況に陥っていた。そんな中で、貴重な綿布ではなく紙を使った紙おむつが開発された。
初の紙おむつは、何枚も重ねたティッシュペーパーのような紙を、伸縮性のあるメリヤスの袋でくるんだ簡易なもの。必要に迫られて登場した紙おむつであったが、布おむつに比べ吸水性で遜色がなく、洗う手間と干す手間がかからない便利さから多くの人に受け入れられた。
日本では昭和20年代後半に初めて紙おむつが発売された。しかしこれは紙綿を重ね布で包んだだけの物で、おむつカバーがなければ使用できなかった。そのため、紙おむつは外出時や、雨で洗濯できない時などに限って使用される程度であったようだ。
1962(昭和37)年、紙おむつより一足早く乳幼児用ライナーが発売された。当時は電機洗濯機が普及しつつある時期であったが、おむつは下洗いをして便を取り除いてから洗濯機に入れるという手間が必要であった。そこで重宝だったのが布おむつの内側に敷く紙綿製のライナー(ここ参照)だった。当時は、まだ、ほとんどの家庭が汲み取り式便所だったからトイレに汚物も捨てやすかったのだろう。その後も紙おむの改良はされていったたが、高価なことや使い捨ての習慣がない時代だったせいもあり、広く普及することはなかった。
日本で紙おむつが普及し始めたのは昭和50年代からである。1977(昭和52)にアメリカから乳幼児用のテープ型紙おむつ「パンパース」(P&G社 )が輸入され、福岡県・佐賀県でテスト販売がはじまった。立体裁断された紙おむつは、腰の部分2ヵ所をテープで止めるだけで、おむつカバーとおむつの両方を兼ねてしまう、テープ型という新しい形で,最大の特長はおむつカバーがいらないことであった。
おむつの洗濯という重労働から世界の母親を解放した革命的商品は、日本でも大ヒット。特に、病院(産院)ではこぞってパンパースを導入。一時は9割以上の寡占的なシェアを占めていた。
日本でも1981(昭和 56 )年に、ユニ・チャーム㈱が初めて純国産の.テープ型紙おむつ「 ムーニー」を発売。それ以降乳幼児用.紙おむつ市場には多くのメーカーが参入し、本格的な普及がはじまった。
国民生活白書(※10参照)を見てもわかるように、同じ頃、働く女性の数が急上昇していた。1970年代半ば以降の労働力率(ここ参照)は,男性が引き続き低下する一方で女性は上昇に転じた。その特徴として,女性が労働力としてとどまる期間が長期化したことに加え,男性の賃金が従来ほど伸びない中で,短時間の雇用者,いわゆるパートタイマーを中心とする既婚女性の雇用者が増加したことである。女性の雇用者に占める短時間雇用者の割合は1970(昭和45)年には12.2%であったのが,1985(昭和50)年には,22.0%となり,その後も上昇している。
そこには、経済成長率が低下して賃金が従来ほど上昇しなくなったなかで,子供の教育の重要性に対する認識や住生活の向上への欲求が高まり,そのための費用を女性が働いて賄おうとするようになったことがある。サラリーマン世帯の収入に占める妻の収入の割合を見ると、,平均で1970(昭和45)年の4.5%から1985年には8.0%に上昇している。
また,電子レンジや全自動洗濯機などの新たな家庭電化製品の普及と共に、紙おむつやベビーフードなどの普及,外食産業や惣菜産業などの発達による食事づくりの簡便化などにより,家事の負担が一層軽減されて,働くための時間的な余裕も生まれたことも小さくないようだ。
それに1975年の国際婦人年とそれに続く国連婦人の10年を経て世界的にもフェミニズムが広がり,女性が働くことに対する社会の風潮も変化した。また,女性の高学歴化の進展などを背景に社会において自己実現を求める女性が増え,ていったことなどもある。
そのようなことが相まって、日本で紙おむつの消費量が急激に増えたのは、1980年代半ばのようだ。ちょうどその頃、高分子吸収体を使った紙おむつが登場した。それまでの紙おむつよりも吸水性が格段にアップし、取り替える頻度も減った。
1990年代に入るとそれまでのテープ方式やフラット型に、新しくパンツ型が登場した。下着のパンツのように一体成形した形で、立ったままはかせることができ、テープ型のようにかさばらないのが特長である。そのほかにもパンツ型の紙おむつは、おむつ離れの時期を迎えた幼児用のおむつ離れを促すものや、排尿告知ができるようになった幼児が、おねしょ防止のため寝るときだけに使用するものなど、異なる目的の製品も作られている。
ライナーやフラット型からスタートしたわが国の乳幼児用は、今日に至ってテープ型にパンツ型を加え、使用する乳幼児の成長過程、それぞれのニーズに合わせて、最適のものが選択できるようになった。そして、1985(昭和60)年頃から急速に普及した乳幼児用紙おむつへの転換率は現在では90%以上いや99%近くに達しているとも聞く。※11:「日本衛生材料工業連合会」の以下の紙おむつ・ライナー生産統計参照。
紙おむつ・ライナー生産統計(年度別推移)
一方で大人用は高齢化社会により需要が急増し、2000年頃からドラッグストアなど販売店での大人用紙おむつ・吸収パッド・吸収パンツの売り場スペースが拡大される傾向にあり、数年以内に大人用紙おむつの生産量が乳幼児用の生産量を追い越すかもしれないといわれている。
「紙おむつ」といえば赤ちゃん用」・・と思っていたが、そんな常識が近年覆りつつあるようだ。少子高齢化の状況は、以下参考の※12:「総務省統計局人口推計の結果概要」のV.長期時系列データを参照。
「紙おむつ」の種類は大きく分けて、乳幼児用は主にテープ止めタイプとパンツタイプが使用されるが大人用は、テープ止めタイプ、パンツタイプ、フラットタイプ、パッドタイプと4つあり、すべての種類が使用されている。
この大人用紙おむつのタイプ別の生産枚数は、パンツタイプ紙おむつ(テープで腰部分を止めるテープ型と、下着のようにはくパンツ型が含まれる)が着実な伸びを見せている。また、それと併用して使用するパッド類は、交換の手軽さや、1枚あたりのコストが安いことなどから、急速に普及し、1997年から2008年の10年間で約3倍になっている。これらに対し、おむつカバーと併用するフラットタイプ紙おむつは横ばいである。 データーは先に乳幼児用で示した紙おむつ・ライナー生産統計(年度別推移)を見てください。
因みに、日本衛生材料工業連合会(※11)の調べによる直近のデーター、紙おむつの2014年度の生産数量を2013年対比でみると以下のようになっている。
2014( 平成26)年の乳児用紙おむつの生産量(枚数ベース)はテープ型60億96,134千枚(昨年51億38,587千枚)で前年比119%の伸び、パンツ型は、59億30,274千枚(昨年55億81,992千枚)で前年比106%の伸び、合計120億26,4085千枚(昨年107億20,579千枚)で前年比112%と上向きである。
大人用の生産量はパンツ型(テープ型+パンツ型の計)で14億05,804 千枚(昨年13億44,015 千枚)で105%の伸び(テープ型101%、パンツ型106%)、フラット型は1億69,933 千枚(昨年2億00,882 千枚)で85%と減少しているが、パッド型は、(尿とりパッド+軽失禁ライナー+軽失禁パッドの計)52億18,245千枚(昨年49億45,326千枚)で計106%の伸び(尿とりパッド102%、軽失禁ライナー、軽失禁パッド114%)で、総合計では67億93,982千枚で 105%の伸びとなっている。データーは以下参照。
2013(平成25)年:2014( 平成26)年紙おむつ・ライナー生産数量(日衛連調べ)
乳幼児用は、少子化で国内の需要が減退している中、この伸びは海外輸出が旺盛なようである。2001年から2011年の紙おむつの輸出状況は以下参考の※13:「紙おむつの輸出」についてを参照。
中国における衛生用品(生理処理用品、乳幼児用紙おむつ、大人用紙おむつ)市場については、2013(平成25)年の販売総額594.5億元(5月 24日為替レート1元=19.61円)であり、成長率で前年比12.7%増と伸び続けている。その内訳は生理処理用品が前年比13.5%増の324億元、乳幼児用紙おむつが前年比9.3%増の240.4億元、大人用紙おむつが前年比36.2%増の30.1億元。
市場がスタートしたばかりの大人用紙おむつの成長率が特に高い結果に。また2013(平成25)年の市場浸透率は生理処理用品が91.1%、乳幼児用紙おむつが47%となっている生理処理用品、乳幼児用紙おむつは共に高級品への需要が増加。薄くて軽く表面材をよりソフトにした肌触りのよいものに人気が集まっている。
一方、大人用紙おむつは基本的な機能が備わっていればよいとの考え方が主流で価格に対して敏感だといえるそうだ。生理処理用品に対して、これからまだまだ伸びてゆくだろう紙おむつ市場。人口の多い中国は日本にとって重要な輸出国である(※11:「日本衛生材料工業連合会」の日衛連news No.79「第二回『中日衛生用品企業交流会』参照)。
また、以下※14:「産業ニュース:マーケットウィークリー・783号(2014.6.13)」には以下のように書かれている。
紙おむつ市場の中長期的な成長余地は高い。経験則では乳幼児用紙おむつは、1人当たりの年間GDPが3,000ドルを超えると浸透し始め、4,000ドルを超えると普及率が加速する。中国やタイに続いて、2億人超の人口を抱えるインドネシアが12年に3,000ドルを超えた。インドネシアは普及初期段階で使用頻度にも大きな差がある。日本では1日5枚以上使用するのに対し、インドネシアは約0.3枚。外出時のみに使用するため、日本に比べ少ない。ただし外出時以外にも使用する段階に入りつつあるため、頻度が高まるだろう。
日本の紙おむつメーカーのグローバル(世界的な)シェアは10%以下と決して高くないが、ポテンシャル(潜在的な能力、可能性として持つ力)の高いアジア地域のシェアが高い。中国やインドネシアに続いてフィリピンやインド、ミャンマーなどの需要が伸びそうだという。長期的にはアフリカ市場の参入も見込め、見通しは明るい。
大人用は1人当たりのGDPが1万ドルを超えてから普及期に入ると言われている。先進国でも成長の見込める分野である。
紙おむつは参入壁が高く、寡占化している製品である。背景には多額の初期投資や原材料の調達力、ブランド認知度を向上させるために多額の広告宣伝費が必要だからである。国内の乳幼児用紙おむつのシェア1位がユニ・チャーム(マミー・ポコ)、2位が花王(メリーズ やリリーフ)、3位が米国・P&G(パンパース)、4位が大王製紙(グーン)、5位が王子製紙(ネピア)。この5社で90%超のシェアを占めている。大人用紙おむつ1位がユニ・チャーム、2位が大王製紙、3位が花王。3社で70%強。成長市場である大人用紙おむつでは価格競争はほとんどないが、乳幼児用紙おむつはP&Gがシェアアップを狙い、単価は一時的に下落。足元ではほぼ横ばいしているようだ。一方でグローバルベースの乳幼児用紙おむつのシェアは1位がP&G、2位が米国・キンバリー・クラーク(乳幼児紙おむつブランド「HUGGIES(ハギーズ)」で知られる)、3位がユニ・チャーム。ただ3位にランクインしているがユニ・チャームのシェアは8.6%で、1位と2位グループとは大きな差がある。しかしタイやインドネシアではトップシェアでアジア地域のシェアは27.2%と存在感は高い。北米や南米市場についてはP&Gなどの米国メーカーの認知度やシェアが高いため、日本メーカーの参入は難しいが、P&Gがやや出遅れている大人用紙おむつでは可能性があろう。・・・と。P&Gは、日本でも。P&G・ジャパンを展開している。
いま世界的に日本の商品の品質が評価されている。衛生用品などは特に評価されるだろうから、この産業の成長は期待できる。日本のメーカーに頑張って欲しいものだ。
ただ、その一方で、紙おむつは、資源の問題やごみ問題が指摘されている。使用済みの紙おむつは、衛生上の問題があるため、燃えるゴミとして焼却処分している。そのため、繰り返し洗って使う布おむつに比べてごみを増やすことになる。また、使い捨てのおむつは資源を多く使用するという問題もある。 そこで、各紙おむつメーカーでは、製品の薄型化や軽量化を進め、原料には安全規格に合格した,古紙を使用するなどの対策も行っているようだ。
今や「人生90年の時代」と言われている。誰もが何時介護人の世話にならなくなるかもしれないが、中でも人の世話にだけはなりたくないのが下の世話だろう。人には尊厳がある、しかし、排泄は待ったなしに訪れる現象。自分で処理できるなら自分でしたい。世話になるなら介護人には極力いやな目をさせたり、負担をかけたくない。誰も同じ気持ちだろう。だから、おむつが本人にも家族など周りの人にも「安心」を与え、「明るく前向きな毎日をもたらしてくれるもの」として、さらに進化した安くて扱いやすく快適ななものへと改良していって欲しいものだ・・・・。
このことについては今日は触れない。以下産参考の「※15:乳幼児のおむつ使用の実態と今日的課題」など参照されるとよい。
冒頭の画像はある食品スーパーの幼児用紙おむつ売り場。
参考:
※1:日本記念日協会
http://www.kinenbi.gr.jp/
※2:紙の知識とデーター集
http://www.kamipa.co.jp/info/
※3:、日本製紙連合会
http://www.jpa.gr.jp/
※4:衛生用紙等について - MiLCA User Forum
http://milca-milca.net/forum/viewtopic.php?t=114
※5:大王製紙事件と日本企業の問題点 - みんかぶマガジン
http://money.minkabu.jp/30156
※6:青空文庫-作家別作品リスト:No.76岡本かの子
http://www.aozora.gr.jp/index_pages/person76.html#sakuhin_list_1
※7:ニコニコ大百科「」
http://dic.nicovideo.jp/a/%E8%A5%81
※8:やえむぐら草子
http://homepage3.nifty.com/yaemugura/index.html
※9:布おむつの歴史
https://www.kobe-baby.co.jp/3-2_nunoomutsu_02.html
※10:平成9年 国民生活白書 働く女性 新しい社会システムを求めて 第I部 女性が働く社会
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h9/wp-pl97-01102.html
※11:日本衛生材料工業連合会(JHPIA)
http://www.jhpia.or.jp/index.html
※12:総務省統計局人口推計の結果
http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2.htm
※13:「紙おむつの輸出」について - 税関(Adobe PDF)
http://www.customs.go.jp/kobe/boueki/topix/h23/omutsu.pdf#search='%E7%B5%B1%E8%A8%88+%E6%97%A5%E6%9C%AC+%E7%B4%99%E3%81%8A%E3%82%80%E3%81%A4+%E8%BC%B8%E5%87%BA'
※14:産業ニュース:マーケットウィークリー・783号(2014.6.13)
https://www.chibagin-sec.co.jp/pdf/analyst/783sangyo.pdf#search='%E6%97%A5%E6%9C%AC+%E3%81%8A%E3%82%80%E3%81%A4+%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%BC%E5%88%A5+%E5%9B%BD%E5%86%85%E5%8D%A0%E6%9C%89%E7%8E%87'
※15:乳幼児のおむつ使用の実態と今日的課題 - 佐賀大学機関リポジトリ(Adobe PDF)
http://portal.dl.saga-u.ac.jp/bitstream/123456789/118152/1/takeshita_201101.pdf#search='%E3%81%8A%E3%82%80%E3%81%A4+%E7%B5%B1%E8%A8%88'
おむつ – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%82%80%E3%81%A4
あむつを通じてすべての赤ちゃんの幸せで健やかな成長について考えてもらおうと、赤ちゃん用の紙おむつ「GOO.N(グ~ン)」を製造するエリエール大王製紙株式会社(HP)が制定したもの。日付は6月2日で「062」を「おむつ」と読む語呂合わせから.
冒頭の画像は、エリエール大王製紙のベビー用紙おむつテープタイプ「グーン はじめての肌着 BIGサイズ 52枚」である(ここ参照)。
大王製紙は、Wikipediaでは、紙・板紙の生産量は約245万トン(2009年[平成21年])であり、生産量基準で日本国内では日本製紙・王子製紙・王子板紙に次ぐ国内第4位の規模を持つ(※2ここ参照)。紙パルプ関連の連結売上高(その企業グループの売上高)を基準とすると世界で第20位、国内では王子製紙・日本製紙グループ本社・丸紅・レンゴーに次ぐ第5位(※3のここ参照)。洋紙では新聞用紙・印刷情報用紙・包装用紙・衛生用紙(※4も参照)、板紙では段ボール原紙などと、製品は多岐にわたる。このうち衛生用紙は生産量基準の国内市場占有率(シェア)が約15%で首位(『日経市場占有率』2011年版、日本経済新聞社、2010年)となる。・・・そうだ。
ティッシュペーパーやトイレットペーパーのほか、ベビー用紙おむつ、大人用紙おむつ、生理用品、ペット用品など幅広い家庭用生活用品(衛生用紙)のブランドとしての「エリエール」のことは、スーパーの店頭などでも良く商品を見かけるので知っていたが、それが大王製紙という会社の製品であることは知らなかった。
大王製紙は、「製紙工業企業整備要綱」(1942年9月4日付商工省通牒)に基づき、四国紙業など14の企業が合同して1943(昭和18)年に和紙の製造販売を目的として設立された。当初は和紙の製造・販売に従事していたが、戦後の1947(昭和22)年から洋紙の製造も開始したという。
残念ながら紙の業界のことなどについてはあまり良く知らない私が同社の名前を知ったのは、2011(平成23)年の大王製紙事件が、マスコミで大々的に報道されてからである。当時色々と企業のコーポレート・ガバナンスが問題にされたが、この企業の場合それ以前に上場企業には珍しい複雑な連結会社の状況、(グループの資本構造)にあったようだ(※5参照)。いずれにしても、同社にとっては、大きなマイナスイメージが広がってしまったよね~。ただ、そんなことは今回のテーマではないので本題に戻ることにしよう。
「あんたは若い人にしちゃ世話のかからない人だね。いつも家の中はきちんとしているし、よごれ物一つ溜ためてないね」
「そりゃそうさ。母親が早く亡くなっちゃったから、あかんぼのうちから襁褓(おむつ)を自分で洗濯して、自分で当てがった」
岡本かの子の 『老妓抄』(※6青空文庫参照)より柚木(ゆき)という青年と老妓の会話を引用したものである。
現在使われている「おむつ」は、「おしめ」とも呼ばれるが、排泄物(尿や便)を捕捉するため下腹部に着用する布や紙のことであり、特殊な使用例は別として、通常は、主として、赤ちゃん(乳幼児)や一部の高齢者・障害者・入院患者など、排尿や排便を自己の意思で制御できない者や、体の自由が利かないためにトイレに行くことが困難な者が使用する。また、普段はトイレで用を足せるが、失禁・過敏性腸症候群・夜尿症などを患っている人の対策としても使われる。
この「おむつ」の漢字は「襁褓」と難しい字を書くのだが、これは古来よりの言葉「むつき(襁褓)」の語頭に「お」を附けて、語尾を省略して作られた女房言葉だという説がある。
「襁褓」の漢字「襁」は「衣+強」で「丈夫な」「強く締める」の意味があり、音読みはキョウ(漢音)、訓読みは、おびひも(帯紐)、おう。意味は、おくるみ、子を背負うときの帯紐、子を背負う、という意味がある。〔説文解字・巻八〕には「兒を負ふ衣なり」とあり、子を背負うための帯紐のことをいうそうだ。
また、「褓」は、「衣+保」で、「包む衣」「くるむ衣」の意味があり、〔説文解字〕の本字は緥(糸+保)で、説文解字・巻十三に「小兒の衣なり」とあるから、赤子をくるむ衣、おむつ、かいまき、という意味があるようだ(※6参照)。
『源氏物語』の作者とされる紫式部が書いた『紫式部日記』は、彼女が仕える藤原道長の娘で一条天皇の中宮彰子の出産が迫った寛弘5年(1008年)秋から始まるが、この『紫式部日記』を元に制作された絵巻物『紫式部日記絵巻』というものがある。
その中の、現在残っている旧森川家本第三段(現在:東京国立博物館蔵。重要文化財)に、敦成親王(後の後一条天皇)の五十日の祝儀(誕生50日の祝)の場面が絵詞(えことば)と共に描かれている。
上掲の画像がそれであり、寛弘5年11月1日(1008年12月1日)夜、親王の外祖父道長が五十日の餅を差し上げる場面であり、若宮(敦成親王)を抱くのは道長の北の方(鷹司殿 倫子)、手前は道長、後向きの女性が中宮(彰子)である。e国宝に画像と解説があり絵も拡大画像で見れる。ここクリック。
この絵の北の方が抱く若宮(敦成親王)が着ているものを見てどう思われますか。現在でいうおむつなどではなく細長い着物(産着)を来ていますね~。それにしてもずいぶんと丈が長い。平安時代の貴族の間で使われていた「産着細長(うぶぎのほそなが)」という装束だそうで、細長いので「細長の袍(ほう)」と呼ばれる長い衣の下に、白い単衣を重ねたものだそうだ。世の中には、色々と調べている人がいて、当時の産着を調べている人もいる。以下参考※8:「やえむぐら草子」のホームページを見るとよい。そこでは実際にその衣類を作って実験している写真も掲載されている。
このように「むつき(襁褓)」は、当時の貴族社会などでは乳幼児の産着を指していたようであるが、「むつき」は、「大」「小」の2つの部分に分かれており、「大きいむつき」で赤子の体全体をくるみ、「小さいむつき」を股間にあてて利用していたようだが、やがて赤子の身体全をむつきで覆う習慣がなくなり、股間を覆う布だけが排泄を処理する目的で残り、その股間にあてる布のことを、「お湿し」とも呼ぶようになった。そして、この「お湿し」の女房言葉が、「お湿(おしめ)」であり、その後「おしめ」と混同されて使われるようになったようだ。現在でも「襁褓」と書いて、「むつき」「おむつ」「おしめ」などと読んでいる。「むつき」の語源は他にも、「身(む)」助詞「つ」「着(き)」とする説や、1反(段とも書く)の晒(さらし)から6枚分のおしめが取れることから「お六(おむつ)」と呼ぶようになったとする説などもあるが確かなことは不詳なようである。
貴族などとは違って、一般の平民にとっては大人になっても衣服すら足りていない状態で、乳幼児の排泄物処理に布きれをつかうようになったのは、江戸時代からだといわれるが、それまではなにも着用はしていなかったのだろう。洩らせば、汚れたところをふくぐらいのことであったろうと推察する。
江戸時代になって、赤ちゃんには小便布団という一尺(約303.030 mm)四方の布団を敷いてもちいたようだという話を聞いたことがある。布団と言っても布きれであったかもしれない。 この時に排泄物を受けるための布から、現在の布おむつに発展したとすれば、私など庶民の間では、このような排泄物で濡れ、湿った布を「おしめ」と呼ぶようになったという方が本当かもしれないという気がする。
ただこれも、豊かになった江戸時代も末期ぐらいから、それも、経済的に恵まれた階層で使われ始めたのではないだろうか。なんといっても、江戸時代は、まだまだ「布」はとても貴重な品であった。おむつには、使い古された衣類や浴衣などをほどいて作っていたようだ。特に浴衣は吸汗性に優れた素材でできているため、使い古された浴衣の生地は赤ちゃんのおむつとして最適だっただろう。
そして、一般的な家庭でも布おむつが使われるようになってきたのは明治末から大正時代になってからだと聞いている。当時は使い捨ての紙をおむつとして利用するより、洗って何度でも使える布おむつの方がずっと経済的であった。実際、昭和になっても戦後しばらくまでは、各家庭で綿の古着やさらし綿で作られた輪形・長方形の布おむつが主に利用され、小さな子供多くがいる家庭の庭では沢山の布おむつが干されている・・・、というのが定番の光景だった。1958(昭和33)年〜1959(昭和34)年頃 乳幼児の布おむつレンタル事業が開始されたという(※9参照)。
今では、主流となっているのが「紙おむつ」。世界で最初の紙おむつは、1940年代の半ばにスウェーデンで誕生した。当時、ドイツによる経済封鎖を受けていたスウェーデンでは、綿が不足し、赤ちゃんの布おむつが間に合わない状況に陥っていた。そんな中で、貴重な綿布ではなく紙を使った紙おむつが開発された。
初の紙おむつは、何枚も重ねたティッシュペーパーのような紙を、伸縮性のあるメリヤスの袋でくるんだ簡易なもの。必要に迫られて登場した紙おむつであったが、布おむつに比べ吸水性で遜色がなく、洗う手間と干す手間がかからない便利さから多くの人に受け入れられた。
日本では昭和20年代後半に初めて紙おむつが発売された。しかしこれは紙綿を重ね布で包んだだけの物で、おむつカバーがなければ使用できなかった。そのため、紙おむつは外出時や、雨で洗濯できない時などに限って使用される程度であったようだ。
1962(昭和37)年、紙おむつより一足早く乳幼児用ライナーが発売された。当時は電機洗濯機が普及しつつある時期であったが、おむつは下洗いをして便を取り除いてから洗濯機に入れるという手間が必要であった。そこで重宝だったのが布おむつの内側に敷く紙綿製のライナー(ここ参照)だった。当時は、まだ、ほとんどの家庭が汲み取り式便所だったからトイレに汚物も捨てやすかったのだろう。その後も紙おむの改良はされていったたが、高価なことや使い捨ての習慣がない時代だったせいもあり、広く普及することはなかった。
日本で紙おむつが普及し始めたのは昭和50年代からである。1977(昭和52)にアメリカから乳幼児用のテープ型紙おむつ「パンパース」(P&G社 )が輸入され、福岡県・佐賀県でテスト販売がはじまった。立体裁断された紙おむつは、腰の部分2ヵ所をテープで止めるだけで、おむつカバーとおむつの両方を兼ねてしまう、テープ型という新しい形で,最大の特長はおむつカバーがいらないことであった。
おむつの洗濯という重労働から世界の母親を解放した革命的商品は、日本でも大ヒット。特に、病院(産院)ではこぞってパンパースを導入。一時は9割以上の寡占的なシェアを占めていた。
日本でも1981(昭和 56 )年に、ユニ・チャーム㈱が初めて純国産の.テープ型紙おむつ「 ムーニー」を発売。それ以降乳幼児用.紙おむつ市場には多くのメーカーが参入し、本格的な普及がはじまった。
国民生活白書(※10参照)を見てもわかるように、同じ頃、働く女性の数が急上昇していた。1970年代半ば以降の労働力率(ここ参照)は,男性が引き続き低下する一方で女性は上昇に転じた。その特徴として,女性が労働力としてとどまる期間が長期化したことに加え,男性の賃金が従来ほど伸びない中で,短時間の雇用者,いわゆるパートタイマーを中心とする既婚女性の雇用者が増加したことである。女性の雇用者に占める短時間雇用者の割合は1970(昭和45)年には12.2%であったのが,1985(昭和50)年には,22.0%となり,その後も上昇している。
そこには、経済成長率が低下して賃金が従来ほど上昇しなくなったなかで,子供の教育の重要性に対する認識や住生活の向上への欲求が高まり,そのための費用を女性が働いて賄おうとするようになったことがある。サラリーマン世帯の収入に占める妻の収入の割合を見ると、,平均で1970(昭和45)年の4.5%から1985年には8.0%に上昇している。
また,電子レンジや全自動洗濯機などの新たな家庭電化製品の普及と共に、紙おむつやベビーフードなどの普及,外食産業や惣菜産業などの発達による食事づくりの簡便化などにより,家事の負担が一層軽減されて,働くための時間的な余裕も生まれたことも小さくないようだ。
それに1975年の国際婦人年とそれに続く国連婦人の10年を経て世界的にもフェミニズムが広がり,女性が働くことに対する社会の風潮も変化した。また,女性の高学歴化の進展などを背景に社会において自己実現を求める女性が増え,ていったことなどもある。
そのようなことが相まって、日本で紙おむつの消費量が急激に増えたのは、1980年代半ばのようだ。ちょうどその頃、高分子吸収体を使った紙おむつが登場した。それまでの紙おむつよりも吸水性が格段にアップし、取り替える頻度も減った。
1990年代に入るとそれまでのテープ方式やフラット型に、新しくパンツ型が登場した。下着のパンツのように一体成形した形で、立ったままはかせることができ、テープ型のようにかさばらないのが特長である。そのほかにもパンツ型の紙おむつは、おむつ離れの時期を迎えた幼児用のおむつ離れを促すものや、排尿告知ができるようになった幼児が、おねしょ防止のため寝るときだけに使用するものなど、異なる目的の製品も作られている。
ライナーやフラット型からスタートしたわが国の乳幼児用は、今日に至ってテープ型にパンツ型を加え、使用する乳幼児の成長過程、それぞれのニーズに合わせて、最適のものが選択できるようになった。そして、1985(昭和60)年頃から急速に普及した乳幼児用紙おむつへの転換率は現在では90%以上いや99%近くに達しているとも聞く。※11:「日本衛生材料工業連合会」の以下の紙おむつ・ライナー生産統計参照。
紙おむつ・ライナー生産統計(年度別推移)
一方で大人用は高齢化社会により需要が急増し、2000年頃からドラッグストアなど販売店での大人用紙おむつ・吸収パッド・吸収パンツの売り場スペースが拡大される傾向にあり、数年以内に大人用紙おむつの生産量が乳幼児用の生産量を追い越すかもしれないといわれている。
「紙おむつ」といえば赤ちゃん用」・・と思っていたが、そんな常識が近年覆りつつあるようだ。少子高齢化の状況は、以下参考の※12:「総務省統計局人口推計の結果概要」のV.長期時系列データを参照。
「紙おむつ」の種類は大きく分けて、乳幼児用は主にテープ止めタイプとパンツタイプが使用されるが大人用は、テープ止めタイプ、パンツタイプ、フラットタイプ、パッドタイプと4つあり、すべての種類が使用されている。
この大人用紙おむつのタイプ別の生産枚数は、パンツタイプ紙おむつ(テープで腰部分を止めるテープ型と、下着のようにはくパンツ型が含まれる)が着実な伸びを見せている。また、それと併用して使用するパッド類は、交換の手軽さや、1枚あたりのコストが安いことなどから、急速に普及し、1997年から2008年の10年間で約3倍になっている。これらに対し、おむつカバーと併用するフラットタイプ紙おむつは横ばいである。 データーは先に乳幼児用で示した紙おむつ・ライナー生産統計(年度別推移)を見てください。
因みに、日本衛生材料工業連合会(※11)の調べによる直近のデーター、紙おむつの2014年度の生産数量を2013年対比でみると以下のようになっている。
2014( 平成26)年の乳児用紙おむつの生産量(枚数ベース)はテープ型60億96,134千枚(昨年51億38,587千枚)で前年比119%の伸び、パンツ型は、59億30,274千枚(昨年55億81,992千枚)で前年比106%の伸び、合計120億26,4085千枚(昨年107億20,579千枚)で前年比112%と上向きである。
大人用の生産量はパンツ型(テープ型+パンツ型の計)で14億05,804 千枚(昨年13億44,015 千枚)で105%の伸び(テープ型101%、パンツ型106%)、フラット型は1億69,933 千枚(昨年2億00,882 千枚)で85%と減少しているが、パッド型は、(尿とりパッド+軽失禁ライナー+軽失禁パッドの計)52億18,245千枚(昨年49億45,326千枚)で計106%の伸び(尿とりパッド102%、軽失禁ライナー、軽失禁パッド114%)で、総合計では67億93,982千枚で 105%の伸びとなっている。データーは以下参照。
2013(平成25)年:2014( 平成26)年紙おむつ・ライナー生産数量(日衛連調べ)
乳幼児用は、少子化で国内の需要が減退している中、この伸びは海外輸出が旺盛なようである。2001年から2011年の紙おむつの輸出状況は以下参考の※13:「紙おむつの輸出」についてを参照。
中国における衛生用品(生理処理用品、乳幼児用紙おむつ、大人用紙おむつ)市場については、2013(平成25)年の販売総額594.5億元(5月 24日為替レート1元=19.61円)であり、成長率で前年比12.7%増と伸び続けている。その内訳は生理処理用品が前年比13.5%増の324億元、乳幼児用紙おむつが前年比9.3%増の240.4億元、大人用紙おむつが前年比36.2%増の30.1億元。
市場がスタートしたばかりの大人用紙おむつの成長率が特に高い結果に。また2013(平成25)年の市場浸透率は生理処理用品が91.1%、乳幼児用紙おむつが47%となっている生理処理用品、乳幼児用紙おむつは共に高級品への需要が増加。薄くて軽く表面材をよりソフトにした肌触りのよいものに人気が集まっている。
一方、大人用紙おむつは基本的な機能が備わっていればよいとの考え方が主流で価格に対して敏感だといえるそうだ。生理処理用品に対して、これからまだまだ伸びてゆくだろう紙おむつ市場。人口の多い中国は日本にとって重要な輸出国である(※11:「日本衛生材料工業連合会」の日衛連news No.79「第二回『中日衛生用品企業交流会』参照)。
また、以下※14:「産業ニュース:マーケットウィークリー・783号(2014.6.13)」には以下のように書かれている。
紙おむつ市場の中長期的な成長余地は高い。経験則では乳幼児用紙おむつは、1人当たりの年間GDPが3,000ドルを超えると浸透し始め、4,000ドルを超えると普及率が加速する。中国やタイに続いて、2億人超の人口を抱えるインドネシアが12年に3,000ドルを超えた。インドネシアは普及初期段階で使用頻度にも大きな差がある。日本では1日5枚以上使用するのに対し、インドネシアは約0.3枚。外出時のみに使用するため、日本に比べ少ない。ただし外出時以外にも使用する段階に入りつつあるため、頻度が高まるだろう。
日本の紙おむつメーカーのグローバル(世界的な)シェアは10%以下と決して高くないが、ポテンシャル(潜在的な能力、可能性として持つ力)の高いアジア地域のシェアが高い。中国やインドネシアに続いてフィリピンやインド、ミャンマーなどの需要が伸びそうだという。長期的にはアフリカ市場の参入も見込め、見通しは明るい。
大人用は1人当たりのGDPが1万ドルを超えてから普及期に入ると言われている。先進国でも成長の見込める分野である。
紙おむつは参入壁が高く、寡占化している製品である。背景には多額の初期投資や原材料の調達力、ブランド認知度を向上させるために多額の広告宣伝費が必要だからである。国内の乳幼児用紙おむつのシェア1位がユニ・チャーム(マミー・ポコ)、2位が花王(メリーズ やリリーフ)、3位が米国・P&G(パンパース)、4位が大王製紙(グーン)、5位が王子製紙(ネピア)。この5社で90%超のシェアを占めている。大人用紙おむつ1位がユニ・チャーム、2位が大王製紙、3位が花王。3社で70%強。成長市場である大人用紙おむつでは価格競争はほとんどないが、乳幼児用紙おむつはP&Gがシェアアップを狙い、単価は一時的に下落。足元ではほぼ横ばいしているようだ。一方でグローバルベースの乳幼児用紙おむつのシェアは1位がP&G、2位が米国・キンバリー・クラーク(乳幼児紙おむつブランド「HUGGIES(ハギーズ)」で知られる)、3位がユニ・チャーム。ただ3位にランクインしているがユニ・チャームのシェアは8.6%で、1位と2位グループとは大きな差がある。しかしタイやインドネシアではトップシェアでアジア地域のシェアは27.2%と存在感は高い。北米や南米市場についてはP&Gなどの米国メーカーの認知度やシェアが高いため、日本メーカーの参入は難しいが、P&Gがやや出遅れている大人用紙おむつでは可能性があろう。・・・と。P&Gは、日本でも。P&G・ジャパンを展開している。
いま世界的に日本の商品の品質が評価されている。衛生用品などは特に評価されるだろうから、この産業の成長は期待できる。日本のメーカーに頑張って欲しいものだ。
ただ、その一方で、紙おむつは、資源の問題やごみ問題が指摘されている。使用済みの紙おむつは、衛生上の問題があるため、燃えるゴミとして焼却処分している。そのため、繰り返し洗って使う布おむつに比べてごみを増やすことになる。また、使い捨てのおむつは資源を多く使用するという問題もある。 そこで、各紙おむつメーカーでは、製品の薄型化や軽量化を進め、原料には安全規格に合格した,古紙を使用するなどの対策も行っているようだ。
今や「人生90年の時代」と言われている。誰もが何時介護人の世話にならなくなるかもしれないが、中でも人の世話にだけはなりたくないのが下の世話だろう。人には尊厳がある、しかし、排泄は待ったなしに訪れる現象。自分で処理できるなら自分でしたい。世話になるなら介護人には極力いやな目をさせたり、負担をかけたくない。誰も同じ気持ちだろう。だから、おむつが本人にも家族など周りの人にも「安心」を与え、「明るく前向きな毎日をもたらしてくれるもの」として、さらに進化した安くて扱いやすく快適ななものへと改良していって欲しいものだ・・・・。
このことについては今日は触れない。以下産参考の「※15:乳幼児のおむつ使用の実態と今日的課題」など参照されるとよい。
冒頭の画像はある食品スーパーの幼児用紙おむつ売り場。
参考:
※1:日本記念日協会
http://www.kinenbi.gr.jp/
※2:紙の知識とデーター集
http://www.kamipa.co.jp/info/
※3:、日本製紙連合会
http://www.jpa.gr.jp/
※4:衛生用紙等について - MiLCA User Forum
http://milca-milca.net/forum/viewtopic.php?t=114
※5:大王製紙事件と日本企業の問題点 - みんかぶマガジン
http://money.minkabu.jp/30156
※6:青空文庫-作家別作品リスト:No.76岡本かの子
http://www.aozora.gr.jp/index_pages/person76.html#sakuhin_list_1
※7:ニコニコ大百科「」
http://dic.nicovideo.jp/a/%E8%A5%81
※8:やえむぐら草子
http://homepage3.nifty.com/yaemugura/index.html
※9:布おむつの歴史
https://www.kobe-baby.co.jp/3-2_nunoomutsu_02.html
※10:平成9年 国民生活白書 働く女性 新しい社会システムを求めて 第I部 女性が働く社会
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h9/wp-pl97-01102.html
※11:日本衛生材料工業連合会(JHPIA)
http://www.jhpia.or.jp/index.html
※12:総務省統計局人口推計の結果
http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2.htm
※13:「紙おむつの輸出」について - 税関(Adobe PDF)
http://www.customs.go.jp/kobe/boueki/topix/h23/omutsu.pdf#search='%E7%B5%B1%E8%A8%88+%E6%97%A5%E6%9C%AC+%E7%B4%99%E3%81%8A%E3%82%80%E3%81%A4+%E8%BC%B8%E5%87%BA'
※14:産業ニュース:マーケットウィークリー・783号(2014.6.13)
https://www.chibagin-sec.co.jp/pdf/analyst/783sangyo.pdf#search='%E6%97%A5%E6%9C%AC+%E3%81%8A%E3%82%80%E3%81%A4+%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%BC%E5%88%A5+%E5%9B%BD%E5%86%85%E5%8D%A0%E6%9C%89%E7%8E%87'
※15:乳幼児のおむつ使用の実態と今日的課題 - 佐賀大学機関リポジトリ(Adobe PDF)
http://portal.dl.saga-u.ac.jp/bitstream/123456789/118152/1/takeshita_201101.pdf#search='%E3%81%8A%E3%82%80%E3%81%A4+%E7%B5%B1%E8%A8%88'
おむつ – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%82%80%E3%81%A4