今年は暑くなったり寒くなったりと可笑しな天候続き。
秋・冬物から春・夏物への衣替えをしたついでに、非難用リュックの衣料品も春・夏物へと詰替えをし、リュックの中身だけではなく、防災用の備蓄用食料品等全ての賞味期限切れを点検していた時、今年2月の朝日新聞「天声人語」で『うめぼしの歌』なるものが皮肉たっぷりに紹介されていたのを思い出した。面白い記事は何時もスクラップを保存しているので、それを探すと以下のように書かれていた。
『うめぼしの歌』なるものを去年の小欄で紹介したら、懐かしむ御年配からずいぶん便りをいただいた。
花が咲き、実がなって漬け込まれ、保存食として役に立つまでをユーモラスにつづる歌詞だ。
その梅干しが、少し胸を張っているかもしれない
▼災害に備えた家庭の食料備蓄リストを農水省が作り、先ごろ公表した。
主食、主菜、副菜、その他に分けたうち、梅干しは初めは「その他」で影が薄かった。
それが副菜の最上位に昇格したという
▼絵つきで紹介される優遇には、主産地の和歌山県議らの働きかけがあったらしい。・・・と(2014年2月11日朝刊)。
『うめぼしの歌』の初出は、1910年(明治43年)発行の『尋常小学読本 巻五』だそう(ここ.参照)で、この詩に曲をつけ、一部詩を変えたり、続きができたりした歌が複数作られ、歌い継がれているようだ。
二月・三月花ざかり、
うぐひす鳴いた春の日の
たのしい時もゆめのうち。
五月・六月実がなれば、
枝からふるひおとされて、
きんじよの町へ持出され、
何升何合はかり売。
もとよりすつぱいこのからだ、
しほにつかつてからくなり、
しそにそまつて赤くなり、
七月・八月あついころ、
三日三ばんの土用ぼし、
思へばつらいことばかり、
それもよのため、人のため。
しわはよつてもわかい気で、
小さい君らのなかま入、
うんどう会にもついて行く。
ましていくさのその時は、
なくてはならぬこのわたし。
『梅干しの歌』(「尋常小学読本巻五」所収)
上掲の詩は、以下参考※1:「小さな資料室」の資料58 詩「うめぼし」(「尋常小学読本巻五」所収)に掲載のものを借用したものである。詳しくは、同HPを見てください。
1993(平成5)年9月までフジテレビで放送された幼児教育番組「ひらけ!ポンキッキ」では、関田昇介がこの詩を一部変更したものに曲をつけ、鈴木玲子の歌唱で放送されていた。
又、この詩を紀州 若梅会(紀州田辺梅干協同組合と紀州みなべ協同組合の合同の青年部会)が現代風にアレンジしてつくった『紀州バージョン梅ぼしの歌』が以下のものである。
2月3月花ざかり きれいに咲いたよ梅の花
うぐいす鳴いた春の日の たのしいときも夢のうち
5月6月実がなれば 枝からころがりカゴの中
タルの中に つけられて もとよりすっぱいこの体
おにぎり弁当 梅ぼし入れて おなかもからだも絶好調
朝からひと粒 梅ぼし梅ぼし やわらか梅ぼし 紀州の梅ぼし
ひと粒ふた粒 梅ぼし食べて みんな元気ね 健康ね〜
いつでもどこでも 梅ぼし梅ぼし〜
おいしい梅ぼし 紀州の梅ぼし〜
『紀州バージョン梅ぼしの歌』は2番まであるが、1番のみを掲載した。2番が知りたければ以下参考の※2のうめぼしのうた参照。
又、『紀州バージョン梅ぼしの歌』がどんな歌い方になるかは以下を参照。ここでは、「尋常小学読本巻五」所収のものに近い詩のものやポンキッキで歌われたものなども聞ける。比較して聞いてみるのも面白いだろう。
南部梅林PRムービー(うめぼしのうたバージョン).wmv - YouTube
花が咲いて実がなって、収穫されると、 塩につかり、しそにつかり、土用干しをして梅干しが完成・・・と、梅干しの作り方が、 海や山の遠足、運動会のお弁当としておにぎりの中に入れて食される。・・・と。その利用方法まで織り込んだ歌は口ずさみやすい七・五調のリズムに乗せて、梅干しを擬人化し、人生において華やかな時、艱難辛苦の時もあるが、苦労が報われる時もあるといった人生への応援メッセージが込められており、梅干しの産地のPR用にはもってこいの歌だ。
思い起こせば、私たちが子供の頃育った食糧難の戦後、昼食用の弁当と言えば弁当箱に詰めたご飯の真ん中に梅干し1つだけが入った日の丸弁当(見た目が日の丸に似ていることから呼ばれた)が普通だった。おかずは梅干だけ。それも毎日ゝ同じもの。だから当時使われていたアルマイトで造られた弁当箱など、同じ場所に梅干しを入れることを繰りかえした場合、酸によって蓋が溶けることがあったという体験をした人も多くいるのではないか。
農水省の公表している『緊急時に備えた家庭用食料品備蓄ガイド』(※3参照)を見てみた。そこには、
「梅干し 不測の事態が発生した場合には、不便な生活を強いられることから、例えば、塩類の補充、殺菌作用や疲労回復の効能が期待できる「梅干し」や、精神的ストレスを和らげ、エネルギー補給効果もある。チョコレート・ビスケットといった「おやつ」などを適宜、備えておくと良いでしょう。」・・・と、確かに、梅干しが副菜の最上位に掲載されている。
このガイドに絵つきで紹介される優遇には、「うめ(梅)には、食中毒予防、ウイルス増殖・感染抑制、疲労回復、食欲増進、熱中症予防、高血圧予防等様々な効能が認められており、災害に遭った場合の被災者等の健康保持効果も期待できる。…と言ったことから、天声人語で皮肉たっぷりに言っているように農水省への“主産地の和歌山県議らの働きかけがあったらしい”・・・という話も事実のようだ(参考※4参照)。
私も家人も梅は大好物なので、我が家では梅干しをそのまま食べるだけではなく、色々な料理に使っており、在庫を切らしたことはないのだが、この『家庭用食料品備蓄ガイド』 をみて、確かに梅干は日持ちもするし、保存食として常備しておくのによい(※5参照)と思い、改めて、非常用常備食として、もう少し多くの梅干を保存しておくことにした。
日本記念日協会には、今日・6月6日の記念日として「梅の日 」が登録されている。この記念日の登録をしているのが、和歌山県みなべ町など紀南の梅産地の各団体でつくる紀州梅の会でありこの日を中心として、産地の梅を全国の消費者に向けてPRしているようだ。紀州梅の会の『梅の日』の由緒(※2のここ参照)を見ると以下のように書かれている。
「今をさかのぼること460余年、日本中に晴天が続き、作物が育たず、田植えもできず人々が困り果てていた。
神様のお告げにより、後奈良天皇が京都の賀茂神社に詣で、梅を
賀茂別雷神に奉納して祈ったところ、たちまち雷鳴とともに大雨が降りはじめ、五穀豊穣をもたらしました。
人々は、その天恵の雨を「梅雨」とよび、梅に感謝するとともに、災いや疫病を除き、福を招く梅を梅法師と呼んで、贈り物にするようになったといわれています。
この話が、宮中の日記「御湯殿上の日記」に記されていたことから、紀州梅の会によって6月6日が「梅の日」と定められました。」・・・と。
この梅の日の設定にちなんで、和歌山県日高郡みなべ町清川の紀州薬師乃里が、京都賀茂神社献上梅園に認定され、2006(平成18)年から、紀南地方の梅関係団体でつくる「紀州梅の会」が、賀茂神社(上賀茂神社と下賀茂神社)へ青梅(梅干用の梅は少し完熟しかけのもの。青梅は主にジュース、梅酒等に使われる完熟前の青い梅)や梅干の奉納を続けているようだ。
そして、梅干の効能を、子どもにもわかりやすく伝えようとゆうこと『おにぎりになった梅法師』『うぐいすになった梅法師』といった絵本もつくられているようだが、この絵本は、梅干を加工・販売している紀州薬師梅? の社長であり、みなべ町清川 本誓寺の和尚でもある、地元では梅干和尚として有名だという赤松宗典氏が、みなべ町内のイラストレーター松下恭子さんと協同で作ったものらしい。どうも、『梅の日』の最初の提案者もこの赤松氏の様である(※6:森本ゆうの【紀州ほんまもん経営者】の■紀州の梅干 紀州薬師梅? 赤松宗典さまvol.1,vol.2 のところ参照)。
下の動画は、上賀茂神社・下鴨神社への献上紀州梅道中の様子。献梅使を始め、先導されている和尚さんも、行列に参加されている人々は皆、紀南地方の梅加工を営む会社の社長さんや社員など、梅の仕事に携わる人々だそうだ。
『紀州梅の会』 6月6日 上賀茂神社 梅の日の行事、その? - YouTube
下鴨神社 献上紀州梅道中 2012年6月6日 梅の日 記念行事 ... - YouTube
以下は、絵本『おにぎりになった梅法師』と『うぐいすになった梅法師』を見ることが出来る。
おにぎりになった梅法師 - YouTube
第2話「うぐいすになった梅法師」
紀州梅の会には「梅を賀茂別雷神に奉納して祈ったところ、たちまち雷鳴とともに大雨が降りはじめ、五穀豊穣をもたらしました。」とあるが、その真実については、『御湯殿上の日記』を私は読んでいないのでよく判らない。
加茂神社とは、賀茂別雷神社(上賀茂神社)と賀茂御祖神社(下鴨神社)の2つの神社の総称であり、ともに古代氏族の賀茂氏の氏神を祀る神社であり、上賀茂神社の祭神・賀茂別雷大神(かもわけいかづちのみこと)の「別雷」は「若雷」の意味で、若々しい力に満ちた雷(神鳴り)の神という意味。つまり、神名の「ワケ」は「分ける」の意であり、「雷を別けるほどの力を持つ神」という意味であり、「雷神」というわけではない。
又、下鴨神社は、賀茂別雷命(上賀茂神社祭神)の母である玉依姫命の父の賀茂建角身命を祀るため「賀茂御祖神社」と呼ばれている。
そのため、下鴨神社の祭神は、東殿で、賀茂別雷命(上賀茂神社の祭神)の母玉依姫命 を、西殿で、玉依姫命の父賀茂建角身命をお祭りしている。
農耕民族にとって水は最も重要なものの一つであり、水の状況によって収獲が左右されることから、日本においては水神は田の神と結びついた。
下鴨神社のことは以前このブログ「みたらしだんごの日」で詳しく書いたが、そこでも書いたように、下鴨神社境内の(糺の森は賀茂川と高野川の間に挟まれるように広がっていることから、この森は「河合の森」とも呼ばれている。
この糺の森に御手洗川の源泉となる霊水が沸き神の池とされている御手洗池(みたらしのいけ)の上に建つ・井上社(通称:御手洗社)に祀られている瀬織津比売命は祓神かつ水神で、罪、穢を祓い除く神である.ことから、井上社の夏越の例祭として、土用の丑の日に、御手洗祭(みたらしまつり)が行なわれ、御手洗川に足を浸し無病息災を祈願してきたという。
後奈良天皇が祈願したのがこの井上社に祀られている瀬織津比売命だとすると私にはよく判るのだが・・・。いや、ただ、普通に祖霊神への祈願ということだったのだろうか・・・・?。
また,祈願して、「その天恵の雨を「梅雨」とよび、梅に感謝するとともに、災いや疫病を除き、福を招く梅を梅法師と呼んで、贈り物にするようになったといわれています。」・・とあるが、なにか、ここに出てくる「梅法師」は、紀州では梅干和尚として有名だという赤松氏が作った童話の絵本『おにぎりになった梅法師』に出てくる梅(梅法師)の様だ。
童話では、「紀州の美しいお姫様が都で鬼がひどいことをしているのを知って熊野神様にお参りし、お祈りしていると、3本足の神様のカラスが梅の種をくわえてきた.。その種を蒔いて出来た梅を干して、できた梅を6月6日に都に運ぶと鬼が邪魔しに出てくるが嫌いな梅を見て逃げてしまう。都人は其の梅干を食べて病気が治る。そして、姫が持ってきたうめぼしを「梅法師」とよんだ」・・・といった内容だ。
日本神話で、神武東征の際に、高皇産霊尊によって神武天皇のもとに遣わされ、熊野国から大和国への道案内をしたとされる3本足のカラス・八咫烏は、賀茂御祖神社(下鴨神社)の祭神賀茂建角身命の化身だとされている。
童話が、この話と、梅干しとを結び付けて作ったPR用の話だとすると、『梅の日』の由緒も、なにかよくできた作り話・・・て感じがするのだが・・・。
また、「人々は、その天恵の雨を「梅雨」とよび・・」とあるが、気象庁の用語説明では、梅雨は、「晩春から夏にかけて雨や曇りの日が多く現れる現象、またはその期間」とし、梅雨入りは「梅雨の期間に入ること。」といった曖昧な表現になっている。
その上で、先日今年の梅雨入りを発表している(※7)が、今年は地域により例年より2〜7日早く、近畿の場合(代表地点大阪)、梅雨入りは6月4日頃で、平年は『梅の日』と同じ6月6日か7日ぐらいなので3日〜4日位梅雨入りが早いことになる。
しかし、「梅雨入り」「梅雨明け」について、実は明確な定義はないようだ。これはあくまでマスコミ用語であるらしい。
一応、「だいたいこうなれば梅雨」と言った曖昧な決まりはあるが、「曇り、又は雨が1週間以上続くと予想された時、梅雨入りとなり、梅雨明けは晴れが1週間以上続くと予想された時」 ・・・としている。気象庁もこのような判断で発表しているようだがそれは確定ではなくあくまで予測であり、発表も○月○日頃。と「頃」の字をつけており、確かな梅雨入り梅雨明けはその後になって発表されるのが常である。
何故梅雨になるかと言うと、北にある冷たい空気(オホーツク海気団)と、南にある暖かい空気(小笠原気団)とが衝突すると、そのぶつかった部分(梅雨前線)に雲が発生しやすくなり、その結果として、雨が降りやすくなる。. やがて小笠原気団の勢力が拡大すると、オホーツク海気団とともに梅雨前線が北へ追いやられ、梅雨明けとなる。
ただ、この梅雨前線の動きを予想する事は、現在の科学をもってしてもかなり難しく、そのため梅雨入り、梅雨明けを気象庁は正式に発表しないのである。
しかし、昨日2月5日、民間のTBSテレビの天気予報では、気象庁は早々と梅雨入り宣言しているが今年は梅雨入りは遅れ気味だと言っていた。
その理由は、現在、北の寒気が入りやすい状態で、その影響により南にある梅雨前線が日本に近づけなくなっており、前線はまだ日本の南の位置にある。来週、後半になると南にある気圧が高くなるので、前線が押し上げられ、梅雨入りが近づきそうだ。梅雨入りが遅れると梅雨明けも遅れる傾向なので農作物などにもしかしたら影響があるかも知れない・・・と(※8参照)。以下で寒気予想が見られる。
?吉田産業海洋気象事業部[天気」HP
この梅雨、日本だけに起こる「独特なもの」と思われがちだが、朝鮮半島南部、中国の華南や華中の沿海部などでも起こる特有の気象現象で、あり、逆に日本でも北海道には「梅雨」はない。
日本では「梅雨」と書いて「つゆ」と読むが、それはなぜか?
やまとことばの「つゆ(梅雨)」は、「つゆ(露)」に由来する。露は草木の葉などにできる水滴のことである。梅雨は梅の実のなるころに降る雨。
梅は中国の四川省から湖北省あたりが原産地であるが、中国語でも「つゆ」は日本語と同じ「梅雨」と書く。ただし発音は「バイウ」ではなく、「メイユー」。中国では古くは黴(かび)の生えやすい時期の雨という意味で、もともと「梅雨(ばいう)」と同音の「黴雨(ばいう)」と字が当てられており、現在も用いられることがあるという。
梅は中国文化とともに薬木として渡来したものらしい。奈良時代以前には日本ですでに植栽されていたという。おそらく「梅雨」という語もこのころに中国から入ってきたらしい。
『日本歳時記』には「此の月淫雨(いんう)ふるこれを梅雨(つゆ)と名づく」とあるらしい(※9参照)。
「淫雨」・・・「淫らな雨」と書くが、「淫」の字には「物事に深入りする」とか「度が過ぎる」という意味もあることから、度が過ぎて長期間にわたる雨という意味らしい。度を過ぎて長期間雨は降ると黴(かび)も生えるだろう。
黴の生える時期の黴雨(ばいう)というよりも、梅の実が熟す頃に降る雨だから梅雨(ばいう)と書いて、「露(つゆ)からの連想で「つゆ」と読ませる方が語感も良く、きれいだよね。万葉人(万葉集に登場するさまざまな人々)ならそう考えると思うよ。しかし、他にも、「黴によって物が損なわれる「費ゆ(つひゆ)」に由来」「梅の実が熟して潰れる頃という意味の「潰ゆ(つゆ)」に由来」とする説もあり、梅雨の語源は判らないことが多いようだ。
こうして梅雨(つゆ)という言葉が定着したが、日本には素敵な梅雨時に降る雨には他にも素敵な異称がある。梅霖(ばいりん)」(「霖」とは「長々と降り続く雨をいう」。麦の実る頃であることに由来する「麦雨(ばくう)」、また、旧暦5月に降るので「五月雨(さみだれ)などの別名がある。五月雨は特によく知られているが、「さつきあめ」ともいう。
「さ」は旧暦の5月(現在の6月ごろ)をさし、「みだれ」は「水垂れ」という意味からとか・・・。きれいな言葉であるがこれもやまとことばである。
「五月雨を あつめて早し 最上川 」(奥の細道・最上川・松尾芭蕉。※10参照)
訳: 最上川(もがみがわ)は、五月雨を集めて勢いよく流れる。初案は「あつめて涼し」だったらしい。
「さみだれや 大河を前に 家 二軒 」(蕪村句集・与謝蕪村。※11参照)
訳: 水かさを増して濁流が迫る大河の岸辺に家が二軒、心細げに建っているよ。蕪村は俳人・画家であり、この句は「さみだれ」「大河」「家」を絵画的に構成した趣がある。
梅のPR用に『梅の日』を設定した和歌山県は日本一の梅の生産量を誇り(※12参照)、国内生産量の半分以上を占めている。中でも和歌山県日高郡にあるみなべ町は、日本一の梅の里として知られ、梅の代表品種として知られる「南高梅」発祥の地である(原種「高田梅」および地元にある「南部高校」の略称から生まれた名前だそうである)。また、青梅とともに、梅干しの生産は日本一であり、和歌山県全体の4割超を占めているという(※13参照)。
梅はもともと中国が原産であり、本来梅干は梅酢を作った後の副産物であり、利用法としてはこれを黒焼きにして腹痛の治癒・虫下し・解熱・腸内の消毒の効用を目的に、食用よりもむしろ漢方薬として用いていた。紀元前200年頃のものという馬王堆からも、梅干しが入っていたと考えられる壷が出土しており、これは日本に伝えられたものであるという。
平安時代には村上天皇が梅干しと昆布茶で病を治したという言い伝えが残っているそうだ(※14:「六波羅蜜寺」の年中行事参照)。
梅には多くの効能があるが、これからの梅雨時、食中毒の危険性も多いが、梅干しには食中毒を予防する働きもあることが分かっているという。
『梅の日』は、概ね梅雨入りの日もある。この機会に、一度、梅干しの効能等見直して見るのも良いだろう(参考の※5、※15参照)。
参考:
※1:小さな資料室
http://www.geocities.jp/sybrma/
※2:紀州田辺梅振興協議会HP
http://www.tanabe-ume.jp/
※3:緊急時に備えた家庭用食料品備蓄ガイド - 農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/pdf/pdf/gaido-kinkyu.pdf#search='%E9%A3%9F%E6%96%99%E5%82%99%E8%93%84%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88+%E8%BE%B2%E6%B0%B4%E7%9C%81+%E6%A2%85%E5%B9%B2%E3%81%97'
※4:「緊急時に備えた家庭用食料品備蓄ガイド」(備蓄食料品リスト)に「梅干し」-わかやま県政ニュース
http://wave.pref.wakayama.lg.jp/news/kensei/shiryo.php?sid=18790
※5:梅干しの栄養、効能効果-健康に良い免疫力を高める食べ物
http://kenkou-tabemono.info/index.php?%E6%A2%85%E5%B9%B2%E3%81%97%E3%81%AE%E5%8A%B9%E8%83%BD%E5%8A%B9%E6%9E%9C
※6:森本ゆうの【紀州ほんまもん経営者】5つのタイプ診断
http://ameblo.jp/morimotoyuu/theme-10015773455.html
※7:気象庁|平成26年の梅雨入りと梅雨明け(速報値)
http://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/baiu/sokuhou_baiu.html
※8:梅雨入り 遅れ気味 - TBSのお天気番組
http://www.tbs.co.jp/tenki/weekend20100605.html
※9:語源由来辞典-梅雨(つゆ)
http://gogen-allguide.com/tu/tsuyu.html
※10:芭蕉db 奥の細道最上川
http://www2.yamanashi-ken.ac.jp/~itoyo/basho/okunohosomichi/okuno24.htm
※11:与謝蕪村・俳人列伝 - 日本俳句研究会
http://jphaiku.jp/haizinn/busonn.html
※12:農林水産省:特産果樹生産動態等調査
http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/tokusan_kazyu/index.html
※13:紀州南高梅クラスター
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kikaku/tokei/files/hakusho18-5.pdf#search='%E3%81%BF%E3%81%AA%E3%81%B9%E7%94%BA+%E6%A2%85%E3%81%AE%E7%94%9F%E7%94%A3'
※14:六波羅蜜寺
http://www.rokuhara.or.jp/
※15:
梅(梅干し)・梅リグナンの効能
http://www.umekounou.com/
日本記念日協会
http://www.kinenbi.gr.jp/
梅干し - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A2%85%E5%B9%B2%E3%81%97
秋・冬物から春・夏物への衣替えをしたついでに、非難用リュックの衣料品も春・夏物へと詰替えをし、リュックの中身だけではなく、防災用の備蓄用食料品等全ての賞味期限切れを点検していた時、今年2月の朝日新聞「天声人語」で『うめぼしの歌』なるものが皮肉たっぷりに紹介されていたのを思い出した。面白い記事は何時もスクラップを保存しているので、それを探すと以下のように書かれていた。
『うめぼしの歌』なるものを去年の小欄で紹介したら、懐かしむ御年配からずいぶん便りをいただいた。
花が咲き、実がなって漬け込まれ、保存食として役に立つまでをユーモラスにつづる歌詞だ。
その梅干しが、少し胸を張っているかもしれない
▼災害に備えた家庭の食料備蓄リストを農水省が作り、先ごろ公表した。
主食、主菜、副菜、その他に分けたうち、梅干しは初めは「その他」で影が薄かった。
それが副菜の最上位に昇格したという
▼絵つきで紹介される優遇には、主産地の和歌山県議らの働きかけがあったらしい。・・・と(2014年2月11日朝刊)。
『うめぼしの歌』の初出は、1910年(明治43年)発行の『尋常小学読本 巻五』だそう(ここ.参照)で、この詩に曲をつけ、一部詩を変えたり、続きができたりした歌が複数作られ、歌い継がれているようだ。
二月・三月花ざかり、
うぐひす鳴いた春の日の
たのしい時もゆめのうち。
五月・六月実がなれば、
枝からふるひおとされて、
きんじよの町へ持出され、
何升何合はかり売。
もとよりすつぱいこのからだ、
しほにつかつてからくなり、
しそにそまつて赤くなり、
七月・八月あついころ、
三日三ばんの土用ぼし、
思へばつらいことばかり、
それもよのため、人のため。
しわはよつてもわかい気で、
小さい君らのなかま入、
うんどう会にもついて行く。
ましていくさのその時は、
なくてはならぬこのわたし。
『梅干しの歌』(「尋常小学読本巻五」所収)
上掲の詩は、以下参考※1:「小さな資料室」の資料58 詩「うめぼし」(「尋常小学読本巻五」所収)に掲載のものを借用したものである。詳しくは、同HPを見てください。
1993(平成5)年9月までフジテレビで放送された幼児教育番組「ひらけ!ポンキッキ」では、関田昇介がこの詩を一部変更したものに曲をつけ、鈴木玲子の歌唱で放送されていた。
又、この詩を紀州 若梅会(紀州田辺梅干協同組合と紀州みなべ協同組合の合同の青年部会)が現代風にアレンジしてつくった『紀州バージョン梅ぼしの歌』が以下のものである。
2月3月花ざかり きれいに咲いたよ梅の花
うぐいす鳴いた春の日の たのしいときも夢のうち
5月6月実がなれば 枝からころがりカゴの中
タルの中に つけられて もとよりすっぱいこの体
おにぎり弁当 梅ぼし入れて おなかもからだも絶好調
朝からひと粒 梅ぼし梅ぼし やわらか梅ぼし 紀州の梅ぼし
ひと粒ふた粒 梅ぼし食べて みんな元気ね 健康ね〜
いつでもどこでも 梅ぼし梅ぼし〜
おいしい梅ぼし 紀州の梅ぼし〜
『紀州バージョン梅ぼしの歌』は2番まであるが、1番のみを掲載した。2番が知りたければ以下参考の※2のうめぼしのうた参照。
又、『紀州バージョン梅ぼしの歌』がどんな歌い方になるかは以下を参照。ここでは、「尋常小学読本巻五」所収のものに近い詩のものやポンキッキで歌われたものなども聞ける。比較して聞いてみるのも面白いだろう。
南部梅林PRムービー(うめぼしのうたバージョン).wmv - YouTube
花が咲いて実がなって、収穫されると、 塩につかり、しそにつかり、土用干しをして梅干しが完成・・・と、梅干しの作り方が、 海や山の遠足、運動会のお弁当としておにぎりの中に入れて食される。・・・と。その利用方法まで織り込んだ歌は口ずさみやすい七・五調のリズムに乗せて、梅干しを擬人化し、人生において華やかな時、艱難辛苦の時もあるが、苦労が報われる時もあるといった人生への応援メッセージが込められており、梅干しの産地のPR用にはもってこいの歌だ。
思い起こせば、私たちが子供の頃育った食糧難の戦後、昼食用の弁当と言えば弁当箱に詰めたご飯の真ん中に梅干し1つだけが入った日の丸弁当(見た目が日の丸に似ていることから呼ばれた)が普通だった。おかずは梅干だけ。それも毎日ゝ同じもの。だから当時使われていたアルマイトで造られた弁当箱など、同じ場所に梅干しを入れることを繰りかえした場合、酸によって蓋が溶けることがあったという体験をした人も多くいるのではないか。
農水省の公表している『緊急時に備えた家庭用食料品備蓄ガイド』(※3参照)を見てみた。そこには、
「梅干し 不測の事態が発生した場合には、不便な生活を強いられることから、例えば、塩類の補充、殺菌作用や疲労回復の効能が期待できる「梅干し」や、精神的ストレスを和らげ、エネルギー補給効果もある。チョコレート・ビスケットといった「おやつ」などを適宜、備えておくと良いでしょう。」・・・と、確かに、梅干しが副菜の最上位に掲載されている。
このガイドに絵つきで紹介される優遇には、「うめ(梅)には、食中毒予防、ウイルス増殖・感染抑制、疲労回復、食欲増進、熱中症予防、高血圧予防等様々な効能が認められており、災害に遭った場合の被災者等の健康保持効果も期待できる。…と言ったことから、天声人語で皮肉たっぷりに言っているように農水省への“主産地の和歌山県議らの働きかけがあったらしい”・・・という話も事実のようだ(参考※4参照)。
私も家人も梅は大好物なので、我が家では梅干しをそのまま食べるだけではなく、色々な料理に使っており、在庫を切らしたことはないのだが、この『家庭用食料品備蓄ガイド』 をみて、確かに梅干は日持ちもするし、保存食として常備しておくのによい(※5参照)と思い、改めて、非常用常備食として、もう少し多くの梅干を保存しておくことにした。
日本記念日協会には、今日・6月6日の記念日として「梅の日 」が登録されている。この記念日の登録をしているのが、和歌山県みなべ町など紀南の梅産地の各団体でつくる紀州梅の会でありこの日を中心として、産地の梅を全国の消費者に向けてPRしているようだ。紀州梅の会の『梅の日』の由緒(※2のここ参照)を見ると以下のように書かれている。
「今をさかのぼること460余年、日本中に晴天が続き、作物が育たず、田植えもできず人々が困り果てていた。
神様のお告げにより、後奈良天皇が京都の賀茂神社に詣で、梅を
賀茂別雷神に奉納して祈ったところ、たちまち雷鳴とともに大雨が降りはじめ、五穀豊穣をもたらしました。
人々は、その天恵の雨を「梅雨」とよび、梅に感謝するとともに、災いや疫病を除き、福を招く梅を梅法師と呼んで、贈り物にするようになったといわれています。
この話が、宮中の日記「御湯殿上の日記」に記されていたことから、紀州梅の会によって6月6日が「梅の日」と定められました。」・・・と。
この梅の日の設定にちなんで、和歌山県日高郡みなべ町清川の紀州薬師乃里が、京都賀茂神社献上梅園に認定され、2006(平成18)年から、紀南地方の梅関係団体でつくる「紀州梅の会」が、賀茂神社(上賀茂神社と下賀茂神社)へ青梅(梅干用の梅は少し完熟しかけのもの。青梅は主にジュース、梅酒等に使われる完熟前の青い梅)や梅干の奉納を続けているようだ。
そして、梅干の効能を、子どもにもわかりやすく伝えようとゆうこと『おにぎりになった梅法師』『うぐいすになった梅法師』といった絵本もつくられているようだが、この絵本は、梅干を加工・販売している紀州薬師梅? の社長であり、みなべ町清川 本誓寺の和尚でもある、地元では梅干和尚として有名だという赤松宗典氏が、みなべ町内のイラストレーター松下恭子さんと協同で作ったものらしい。どうも、『梅の日』の最初の提案者もこの赤松氏の様である(※6:森本ゆうの【紀州ほんまもん経営者】の■紀州の梅干 紀州薬師梅? 赤松宗典さまvol.1,vol.2 のところ参照)。
下の動画は、上賀茂神社・下鴨神社への献上紀州梅道中の様子。献梅使を始め、先導されている和尚さんも、行列に参加されている人々は皆、紀南地方の梅加工を営む会社の社長さんや社員など、梅の仕事に携わる人々だそうだ。
『紀州梅の会』 6月6日 上賀茂神社 梅の日の行事、その? - YouTube
下鴨神社 献上紀州梅道中 2012年6月6日 梅の日 記念行事 ... - YouTube
以下は、絵本『おにぎりになった梅法師』と『うぐいすになった梅法師』を見ることが出来る。
おにぎりになった梅法師 - YouTube
第2話「うぐいすになった梅法師」
紀州梅の会には「梅を賀茂別雷神に奉納して祈ったところ、たちまち雷鳴とともに大雨が降りはじめ、五穀豊穣をもたらしました。」とあるが、その真実については、『御湯殿上の日記』を私は読んでいないのでよく判らない。
加茂神社とは、賀茂別雷神社(上賀茂神社)と賀茂御祖神社(下鴨神社)の2つの神社の総称であり、ともに古代氏族の賀茂氏の氏神を祀る神社であり、上賀茂神社の祭神・賀茂別雷大神(かもわけいかづちのみこと)の「別雷」は「若雷」の意味で、若々しい力に満ちた雷(神鳴り)の神という意味。つまり、神名の「ワケ」は「分ける」の意であり、「雷を別けるほどの力を持つ神」という意味であり、「雷神」というわけではない。
又、下鴨神社は、賀茂別雷命(上賀茂神社祭神)の母である玉依姫命の父の賀茂建角身命を祀るため「賀茂御祖神社」と呼ばれている。
そのため、下鴨神社の祭神は、東殿で、賀茂別雷命(上賀茂神社の祭神)の母玉依姫命 を、西殿で、玉依姫命の父賀茂建角身命をお祭りしている。
農耕民族にとって水は最も重要なものの一つであり、水の状況によって収獲が左右されることから、日本においては水神は田の神と結びついた。
下鴨神社のことは以前このブログ「みたらしだんごの日」で詳しく書いたが、そこでも書いたように、下鴨神社境内の(糺の森は賀茂川と高野川の間に挟まれるように広がっていることから、この森は「河合の森」とも呼ばれている。
この糺の森に御手洗川の源泉となる霊水が沸き神の池とされている御手洗池(みたらしのいけ)の上に建つ・井上社(通称:御手洗社)に祀られている瀬織津比売命は祓神かつ水神で、罪、穢を祓い除く神である.ことから、井上社の夏越の例祭として、土用の丑の日に、御手洗祭(みたらしまつり)が行なわれ、御手洗川に足を浸し無病息災を祈願してきたという。
後奈良天皇が祈願したのがこの井上社に祀られている瀬織津比売命だとすると私にはよく判るのだが・・・。いや、ただ、普通に祖霊神への祈願ということだったのだろうか・・・・?。
また,祈願して、「その天恵の雨を「梅雨」とよび、梅に感謝するとともに、災いや疫病を除き、福を招く梅を梅法師と呼んで、贈り物にするようになったといわれています。」・・とあるが、なにか、ここに出てくる「梅法師」は、紀州では梅干和尚として有名だという赤松氏が作った童話の絵本『おにぎりになった梅法師』に出てくる梅(梅法師)の様だ。
童話では、「紀州の美しいお姫様が都で鬼がひどいことをしているのを知って熊野神様にお参りし、お祈りしていると、3本足の神様のカラスが梅の種をくわえてきた.。その種を蒔いて出来た梅を干して、できた梅を6月6日に都に運ぶと鬼が邪魔しに出てくるが嫌いな梅を見て逃げてしまう。都人は其の梅干を食べて病気が治る。そして、姫が持ってきたうめぼしを「梅法師」とよんだ」・・・といった内容だ。
日本神話で、神武東征の際に、高皇産霊尊によって神武天皇のもとに遣わされ、熊野国から大和国への道案内をしたとされる3本足のカラス・八咫烏は、賀茂御祖神社(下鴨神社)の祭神賀茂建角身命の化身だとされている。
童話が、この話と、梅干しとを結び付けて作ったPR用の話だとすると、『梅の日』の由緒も、なにかよくできた作り話・・・て感じがするのだが・・・。
また、「人々は、その天恵の雨を「梅雨」とよび・・」とあるが、気象庁の用語説明では、梅雨は、「晩春から夏にかけて雨や曇りの日が多く現れる現象、またはその期間」とし、梅雨入りは「梅雨の期間に入ること。」といった曖昧な表現になっている。
その上で、先日今年の梅雨入りを発表している(※7)が、今年は地域により例年より2〜7日早く、近畿の場合(代表地点大阪)、梅雨入りは6月4日頃で、平年は『梅の日』と同じ6月6日か7日ぐらいなので3日〜4日位梅雨入りが早いことになる。
しかし、「梅雨入り」「梅雨明け」について、実は明確な定義はないようだ。これはあくまでマスコミ用語であるらしい。
一応、「だいたいこうなれば梅雨」と言った曖昧な決まりはあるが、「曇り、又は雨が1週間以上続くと予想された時、梅雨入りとなり、梅雨明けは晴れが1週間以上続くと予想された時」 ・・・としている。気象庁もこのような判断で発表しているようだがそれは確定ではなくあくまで予測であり、発表も○月○日頃。と「頃」の字をつけており、確かな梅雨入り梅雨明けはその後になって発表されるのが常である。
何故梅雨になるかと言うと、北にある冷たい空気(オホーツク海気団)と、南にある暖かい空気(小笠原気団)とが衝突すると、そのぶつかった部分(梅雨前線)に雲が発生しやすくなり、その結果として、雨が降りやすくなる。. やがて小笠原気団の勢力が拡大すると、オホーツク海気団とともに梅雨前線が北へ追いやられ、梅雨明けとなる。
ただ、この梅雨前線の動きを予想する事は、現在の科学をもってしてもかなり難しく、そのため梅雨入り、梅雨明けを気象庁は正式に発表しないのである。
しかし、昨日2月5日、民間のTBSテレビの天気予報では、気象庁は早々と梅雨入り宣言しているが今年は梅雨入りは遅れ気味だと言っていた。
その理由は、現在、北の寒気が入りやすい状態で、その影響により南にある梅雨前線が日本に近づけなくなっており、前線はまだ日本の南の位置にある。来週、後半になると南にある気圧が高くなるので、前線が押し上げられ、梅雨入りが近づきそうだ。梅雨入りが遅れると梅雨明けも遅れる傾向なので農作物などにもしかしたら影響があるかも知れない・・・と(※8参照)。以下で寒気予想が見られる。
?吉田産業海洋気象事業部[天気」HP
この梅雨、日本だけに起こる「独特なもの」と思われがちだが、朝鮮半島南部、中国の華南や華中の沿海部などでも起こる特有の気象現象で、あり、逆に日本でも北海道には「梅雨」はない。
日本では「梅雨」と書いて「つゆ」と読むが、それはなぜか?
やまとことばの「つゆ(梅雨)」は、「つゆ(露)」に由来する。露は草木の葉などにできる水滴のことである。梅雨は梅の実のなるころに降る雨。
梅は中国の四川省から湖北省あたりが原産地であるが、中国語でも「つゆ」は日本語と同じ「梅雨」と書く。ただし発音は「バイウ」ではなく、「メイユー」。中国では古くは黴(かび)の生えやすい時期の雨という意味で、もともと「梅雨(ばいう)」と同音の「黴雨(ばいう)」と字が当てられており、現在も用いられることがあるという。
梅は中国文化とともに薬木として渡来したものらしい。奈良時代以前には日本ですでに植栽されていたという。おそらく「梅雨」という語もこのころに中国から入ってきたらしい。
『日本歳時記』には「此の月淫雨(いんう)ふるこれを梅雨(つゆ)と名づく」とあるらしい(※9参照)。
「淫雨」・・・「淫らな雨」と書くが、「淫」の字には「物事に深入りする」とか「度が過ぎる」という意味もあることから、度が過ぎて長期間にわたる雨という意味らしい。度を過ぎて長期間雨は降ると黴(かび)も生えるだろう。
黴の生える時期の黴雨(ばいう)というよりも、梅の実が熟す頃に降る雨だから梅雨(ばいう)と書いて、「露(つゆ)からの連想で「つゆ」と読ませる方が語感も良く、きれいだよね。万葉人(万葉集に登場するさまざまな人々)ならそう考えると思うよ。しかし、他にも、「黴によって物が損なわれる「費ゆ(つひゆ)」に由来」「梅の実が熟して潰れる頃という意味の「潰ゆ(つゆ)」に由来」とする説もあり、梅雨の語源は判らないことが多いようだ。
こうして梅雨(つゆ)という言葉が定着したが、日本には素敵な梅雨時に降る雨には他にも素敵な異称がある。梅霖(ばいりん)」(「霖」とは「長々と降り続く雨をいう」。麦の実る頃であることに由来する「麦雨(ばくう)」、また、旧暦5月に降るので「五月雨(さみだれ)などの別名がある。五月雨は特によく知られているが、「さつきあめ」ともいう。
「さ」は旧暦の5月(現在の6月ごろ)をさし、「みだれ」は「水垂れ」という意味からとか・・・。きれいな言葉であるがこれもやまとことばである。
「五月雨を あつめて早し 最上川 」(奥の細道・最上川・松尾芭蕉。※10参照)
訳: 最上川(もがみがわ)は、五月雨を集めて勢いよく流れる。初案は「あつめて涼し」だったらしい。
「さみだれや 大河を前に 家 二軒 」(蕪村句集・与謝蕪村。※11参照)
訳: 水かさを増して濁流が迫る大河の岸辺に家が二軒、心細げに建っているよ。蕪村は俳人・画家であり、この句は「さみだれ」「大河」「家」を絵画的に構成した趣がある。
梅のPR用に『梅の日』を設定した和歌山県は日本一の梅の生産量を誇り(※12参照)、国内生産量の半分以上を占めている。中でも和歌山県日高郡にあるみなべ町は、日本一の梅の里として知られ、梅の代表品種として知られる「南高梅」発祥の地である(原種「高田梅」および地元にある「南部高校」の略称から生まれた名前だそうである)。また、青梅とともに、梅干しの生産は日本一であり、和歌山県全体の4割超を占めているという(※13参照)。
梅はもともと中国が原産であり、本来梅干は梅酢を作った後の副産物であり、利用法としてはこれを黒焼きにして腹痛の治癒・虫下し・解熱・腸内の消毒の効用を目的に、食用よりもむしろ漢方薬として用いていた。紀元前200年頃のものという馬王堆からも、梅干しが入っていたと考えられる壷が出土しており、これは日本に伝えられたものであるという。
平安時代には村上天皇が梅干しと昆布茶で病を治したという言い伝えが残っているそうだ(※14:「六波羅蜜寺」の年中行事参照)。
梅には多くの効能があるが、これからの梅雨時、食中毒の危険性も多いが、梅干しには食中毒を予防する働きもあることが分かっているという。
『梅の日』は、概ね梅雨入りの日もある。この機会に、一度、梅干しの効能等見直して見るのも良いだろう(参考の※5、※15参照)。
参考:
※1:小さな資料室
http://www.geocities.jp/sybrma/
※2:紀州田辺梅振興協議会HP
http://www.tanabe-ume.jp/
※3:緊急時に備えた家庭用食料品備蓄ガイド - 農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/pdf/pdf/gaido-kinkyu.pdf#search='%E9%A3%9F%E6%96%99%E5%82%99%E8%93%84%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88+%E8%BE%B2%E6%B0%B4%E7%9C%81+%E6%A2%85%E5%B9%B2%E3%81%97'
※4:「緊急時に備えた家庭用食料品備蓄ガイド」(備蓄食料品リスト)に「梅干し」-わかやま県政ニュース
http://wave.pref.wakayama.lg.jp/news/kensei/shiryo.php?sid=18790
※5:梅干しの栄養、効能効果-健康に良い免疫力を高める食べ物
http://kenkou-tabemono.info/index.php?%E6%A2%85%E5%B9%B2%E3%81%97%E3%81%AE%E5%8A%B9%E8%83%BD%E5%8A%B9%E6%9E%9C
※6:森本ゆうの【紀州ほんまもん経営者】5つのタイプ診断
http://ameblo.jp/morimotoyuu/theme-10015773455.html
※7:気象庁|平成26年の梅雨入りと梅雨明け(速報値)
http://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/baiu/sokuhou_baiu.html
※8:梅雨入り 遅れ気味 - TBSのお天気番組
http://www.tbs.co.jp/tenki/weekend20100605.html
※9:語源由来辞典-梅雨(つゆ)
http://gogen-allguide.com/tu/tsuyu.html
※10:芭蕉db 奥の細道最上川
http://www2.yamanashi-ken.ac.jp/~itoyo/basho/okunohosomichi/okuno24.htm
※11:与謝蕪村・俳人列伝 - 日本俳句研究会
http://jphaiku.jp/haizinn/busonn.html
※12:農林水産省:特産果樹生産動態等調査
http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/tokusan_kazyu/index.html
※13:紀州南高梅クラスター
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kikaku/tokei/files/hakusho18-5.pdf#search='%E3%81%BF%E3%81%AA%E3%81%B9%E7%94%BA+%E6%A2%85%E3%81%AE%E7%94%9F%E7%94%A3'
※14:六波羅蜜寺
http://www.rokuhara.or.jp/
※15:
梅(梅干し)・梅リグナンの効能
http://www.umekounou.com/
日本記念日協会
http://www.kinenbi.gr.jp/
梅干し - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A2%85%E5%B9%B2%E3%81%97