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マンセッション

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今「マンセッション(mancession)」という言葉が流行しているらしい。
マンセッション(mancession)」は「男性(man)」と「不況(recession)」を組み合わせた造語(男性不況)で、男性の失業が女性よりも深刻な状態を指す新語だそうだ。
4月19日付の朝日新聞「天声人語」(※1)でも触れていたので、ちょっと書いてみる気になった。
自民党の野田聖子総務会長は、当面の重要政策課題をめぐって、4月2日、都内での経団連との意見交換の中で、以下のように述べたと言う(※2)。
「今後、日本がかつてない人口減少社会に突入するという認識のもと、規制改革成長戦略を実行したい」(※3の「成長戦略」とは?参照)
「『ウーマノミクス』(※4参照)という言葉があるが、女性を活用すれば、GDPが15 %は上がるといわれている。他方、男性の失業率が女性の失業率を上回る『マンセッション(男性不況)』になっている。これが、少子化の一因となっている」
「2020 年までに指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30 %程度になるよう期待するという政府の目標は、女性の活躍推進に向けた思いの表れである。すべての分野で優秀な女性が活躍できるよう、尽力したい」と述べ、党として成長戦略や規制改革など、さまざまな課題に取り組む姿勢を示したという。

この「マンセッション」という造語はリーマン・ショック(2008年9月)後の米国で流行し始めたものらしい。
このショックによる不況の原因は、欧米での住宅・不動産バブルの崩壊と金融危機(サブプライム住宅ローン危機)だが、前者は、欧米での住宅・建設需要の大幅な減少をもたらし、後者は、特にリーマンショック以降全世界的に、自動車をはじめとする耐久消費財の需要や企業の設備投資意欲の大幅な縮小を引き起こした。
男性の雇用が多い建設業や製造業・運輸関連などでは非常に大きな供給能力の過剰を抱え込むこととなり、リストラを迫られ、男性失業者が大幅に増加することとなった。
一方、教育や医療に代表されるサービス産業は、この時の不況の原因ではない上に、自動車や家電の企業のように先行き不安などから消費がすぐに落ち込むといったことにはなり難いが、特に先進国では共通して高齢化が進んでおり、医療・福祉関連にはその傾向が強い。
サービス産業でも景気全体の悪化の影響を受けない訳ではなく、それ相応に雇用の削減はある。したがって、医療・福祉などのサービ産業に努める比率の多い女性の失業率も悪化はするものの、その程度は男性に比べれば小さいもので済むことになる。
この男性失業率の大幅な悪化は、バブルの歪みがもたらしたものであるため、欧米諸国では、その調整が一巡し、供給能力に見合った需要が回復するまでは、今のような傾向が長期間続く可能性が高い。その後、米経済の回復とともに、失業率の男女間格差は縮まってきたが、依然として、男性の失業率が女性を上回る先進国は多い。
その背景には、雇用を生み出す産業構造の変化と共に男性から女性への主役の交代があるとされている。ただし,これら 女性の仕事には、賃金水準が相対的に低いという問題が絡んでいる。
一方日本は、自動車などの輸出の大幅減少が雇用悪化の引き金となっており、自国内に原因があるわけではない為、輸出の回復に伴って製造業の雇用も徐々に回復していくものの、輸出の回復は中国やアジア諸国といった新興国での需要の拡大がもたらしている。このことが円高と相まって、生産拠点が海外へ移転していく状況を引き起こしているようだ。また、公共事業削減の影響が大きい建設業の需要が落ち込んでいる。

少し話は横道にそれるが、米マサチューセッツ州の州都ボストンで今月の15日に開催されたボストンマラソンのゴール付近で2回の 爆発が起きた。
当日は、アメリカ独立戦争開始の特別な記念日「愛国者の日(ペイトリオッツ・デイ)」で、同州では祝日だったため、多くの人が応援に駆けつけていたことから、大勢の負傷者を出し、8歳の少年を含む3人が死亡する事件が起きた。
オバマ大統領は翌16日の会見で、現段階で犯人像をつかめていないとした上で、「米国は悪に対処する」と述べ、連邦当局も当初より残虐なテロ行為とみて犯人と見られる2名の男性を公開捜査をし、早々と逃亡中の2名の犯人(チェチェン人兄弟)と銃撃戦の末、1名は死亡、1名は逮捕して、取り調べている旨昨22日には報道があった。
どうも、同兄弟は、別のテロ事件も計画していた可能性があったようであること、イラン国内に拠点を置く国際テロ組織アルカイダの支援を受けていたらしいとの報道も耳にはするが、米国内では、頭もよく真面目だったという青年が、どうしてこのような大それた事件を起こしたのかその動機等は正確にはまだ解明されていないようである。
ただ、ボストンマラソンでの爆破事件が起きたとき、その爆発物の爆発力が小さかったことなどから、一部専門家筋は、「専門のテロ集団とは異なり、米国に不満を持つ国内在住人による、何かしらのアピール目的が強いのではないか」と話していた。
私は、そのような爆破事件の報道を聞いて、リーマンショック以降、いまだ、男性の雇用問題がなかなか改善されない現状にあって、この「マンセッション(mancession)」という言葉と関連して、働きたくても働けないことに不満を持っている人たちの中の一部過激派がお祭り騒ぎで騒いでいる人たちに不満をぶつけた事件であり、日本で起きた秋葉原通り魔事件的なものかもしれないなどという思いが頭をかすめ、急にこのブログを書こうと思った次第である。

日本は,欧米よりも失業率は低く、男女格差も小さかったが、失業率も徐々に高まり、欧米と同様に、男性が女性を上回るようになったのは1997年〜1998年かららしい(日本の失業者数・失業率参照)。
最新データーとしては、総務省が発表した平成25年2月の労働力調査(速報)によると、完全失業率(季節調整値)は前月より0.1ポイント上昇し4.3%となった。男女別では、男性は前月と同水準の4.6%、女性は前月より0.1ポイント上昇し、3.9%となっている。
また、男女別にみた対前年同月比は、男性は6万人減少の171万人、女性も6万人減少の106万人となっている(※5:「総務省統計局・統計データー」の労働力調査(基本集計) 平成25年[2013年)]2月分結果の概要参照)。
総務省は失業率悪化について「国内景気の回復期待で、職を求める女性が増え、結果として失業者増となったため」と分析。今後は女性の就業が進む可能性があるため、短期間のうちに大きく悪化する公算は小さいとしている。
また、有効求人倍率は、求職者1人当たり企業から平均何件の求人があるかを示すが、人手不足感の強い医療・福祉などで高水準の求人が続く一方、自動車など製造業の求人が前年に比べて減少したという(※6)。 

失業を測る尺度である失業率は、労働力人口に対する失業者数の割合で定義される。
失業者とは「働く意思と能力があるのに仕事に就けない状態にある人」を指すので、仕事探しをあきらめた人は失業者には含まれない。
ちなみに、労働力調査では、働く意志があるとは、ハローワークに通って職探しをするなど仕事を探す努力や事業開始の準備をしていること、・・・とされている。
したがって、病人を介護している、幼い子供がいる(保育園に入れなくて待機中)、アルバイトやフリーターなどしている。また、就職難で職 に就けないので就職を半ばあきらめハローワークへ行っていない人など失業者に含まれていない者が多くいる。
政府が雇用維持を目的に、雇用調整助成金を支給したことによって、本来は解雇や派遣切りの対象となっていた可能性のある就労者の雇用が守られている人も失業者には含まれていない。そして、近年この様な雇用調整金がなければ、解雇や 派遣切りの対象となる人が増加しているようであるが、このような人は失業者にカウントされていないので、「隠れ失業者」と呼ばれており、この「隠れ失業者」が、日本の失業率を過小評価し実態を反映していないという指摘もある。
もしこれらの人々を失業者にカウントすると、日本の失業率も発表されている数字の培ぐらい、つまり10%近い高い水準になるのではないかと言われている(労働力調査における失業者や失業率の定義については、「労働力調査」の項目参照)。

総務省統計局の2013年4月16日発表の報道資料:人口推計(平成24年10月1日現在)によると、
日本の総人口は1億2751万5千人となり、前年に比べ28万4千人(0.22%)の減少と2年連続で大きく減少している。
そして、総人口の老年人口(65歳以上)は3079万3千人となり、前年に比べ104万1千人増加、初めて3000万人を超えている。
これまで総人口の増加幅は縮小傾向で推移していたが、平成17年に戦後初めて前年を下回り、以降減少を繰り返し、自然増減は6年連続の自然減少(出生者数<死亡者数)であり、男女別にみると、男性は8年連続、女性は4年連続の自然減少となっている。
人口性比(女性100人に対する男性の数)では94.7%となっており,女性が男性より345万6千人多くなっている(1、人口動向参照)。
また、年齢別人口をみると我が国の人口ピラミッドは、第一次ベビーブーム期(1947年から1949年)生まれが65歳になり、前にも書いた老年人口(65歳以上)に含まれている。
我が国の人口ピラミッドは、近年、出生児童数が第2次ベビーブーム期(1971年から1974年)をピークとして減少傾向が続いていることを反映し、二つのベビーブーム期の人口が膨らんだひょうたん型に近い形となっている。
年齢3区分別にみると、年少人口(0〜14歳)は、1654万7千人で前年に比べ15万8千人の減少、生産年齢人口(15〜64歳)は、8017万5千人なのに対して、老年人口(65歳以上)が3079万3千人で、104万1千人の増加となり、初めて3000万人を超えた。なお、75歳以上は1519万3千人で48万5千人の増加となっている(2、年齢別人口を参照)。

このように、日本の人口は、1940年代後半のベビーブームが起きて以降、1950年代には希望子供数(※7)が減少し多産少子型→少産少死型(人口転換参照)へと変化しており、これは先進国共通の現象ではあるが、日本は、先進諸国に比較して急速に進展している。
今の人は「しょうしか」と言う言葉を聞いて「少子」という漢字を思い浮かべる人たちが多いと思うが、このようになったのは、最近のことであり、「少子」と言う言葉は、本来は「一番若い子。末子」と言う意味で「子供が少ないという言葉ではなかった。
しかし、『広辞苑』では第5版(1998年)から、「少子化」と言う言葉を掲載し、「出生率が低下し、子供の数が減少すること」と説明し、「1992(平成4)年度の『国民生活白書』で使われた語」と言葉の出所を明らかにしている。
「少子化」という言葉が頻繁に使われるようになったのは、この白書以降とみられるが、そもそも出生率の低下が社会的な関心を集め、政策課題として取り上げられるようになったのは、1989(平成元)年のいわゆる「1.57ショック」からである。
これが、『平成4年度国民生活白書』では、「出生率の低下やそれに伴う家庭や社会における子供数の低下傾向を「少子化」「子供や若者が少ない社会」を「少子化」と表現している。
人口学の世界では、一般的に合計特殊出生率が人口を維持するに必要な水準(人口置き換え水準)を相当期間下回っている状況を「少子化」と定義している。
女性が平均2人の子供を生むと(合計特殊出生率が2.0の状態)と人口規模は維持できる。より正確には生んだ子供が、今度は自分が産む番には亡くなるケースがあるので、人口置換水準は2,07(平成17年版厚生労働白書)となるそうだ。
日本では、1970年代半ば以降、この「少子化現象」が続いているが、これに関しては、まず、近年の女性の結婚行動の変化があげられる。
わが国では、北欧諸国とは異なり、婚外出生の割合が低く(1980年0.80%→ 2003年1.93%にアップしている(婚外子割合の国際比較参照)が、結婚してから子供を産む場合が多く、日本において、女性の結婚行動と出生率は直接関係しているともいえるだろう。
近年の女性の高学歴化と社会進出により、「男は仕事、女は家事」という従来の価値観が変わってきた。特に経済的に自立している女性は、結婚が絶対に必要なことではなくなった。
この様なことが女性の平均初婚年齢の上昇、いわゆる晩婚化・晩産化につながるが、それがさらに進み、そのことが、世代ごとの比較を見ても、出生率を押し下げる結果となっている。
また、そのような晩婚化の進展に併せて、男女ともに生涯未婚率(50歳時点で一度も結婚したことのない人の割合)が上昇しており、2010(平成22)年には、男性で20.1%、女性でも10.6%にもなっており、今後も、男性の出生数が女性より多いことなどもあり、特に男性の生涯未婚率が上昇し、2030(平成42)年には、およそ男性の10人のうち3人、女性の10人のうち2人が生涯未婚であると予測されているという。
このような、晩婚化や非婚化など好んで結婚しない人達ばかりではなく、未婚の女性にとって出産は、男性社員とは違って、キャリアが中断されるというデメリットがあるため、女性の就労のあり方が問題となる。
近年、社員ではない派遣労働やパートタイム労働者の採用増など企業の雇用形態が変化して来ており、これら派遣、パートタイマー等の場合は、特に正規社員以上に育児休暇を取得後の職場復帰の難しさがあり、安定した職業に就けない不安を生む。
また、多くの女性が就労しているサービス産業などの職種は、男性が主として就労している第1次、2次産業などに比して低所得であることが多いが、日本では、子供の教育に多くの費用がかかるため所得がないと子供が育てられない。そのため、結婚したくても将来の計画がみえないために結婚を諦めざるをえないケースも増えているようだ。

労働力が高い国は出生率も高いといわれる。これは働きながらでも十分に子供を産める環境や制度があることを示し、育児と勤労を両立できることによって、1人が第1子、第2子と産める経済的なゆとりができる。
核家族化の進んでいる日本にあって、保育所の不足は自身では解決できないし、小児科の医師不足においても同様に解決できない問題である。社会全体が子供を持つことで不安にならずに安心して暮らせる状態を作ることが大切である。
出生率を回復させるためには、公的給付や、子供を持つ世帯に配慮した税制、仕事と家庭を両立させるための出産・育児休暇制度の改善などにより、「子供を持つことで損をしない、子供を産んで良かった」と感じられる状態を作りだすことが少子化対策の最も大切なことであるとは考えるのだが・・・。
少子化の問題には、それを招く要因はいくつもある。、今取り組まなければいけない課題などは、『平成24年版厚生労働白書』(※5参照)の第1部第6章 日本社会の直面する変化や課題と今後の生活保障のあり方で明らかにされているし、参考※8:「内閣府>共生社会政策》少子化対策」の中にある公表資料『平成24年版 子ども・子育て白書』(旧少子化社会白書)の中で、少子化への具体的な対処施策が述べられている。
要は、これが、実現できるかどうかであるが、この様な、少子化の問題や解決すべき課題などはすでに『平成16年版 少子化社会白書』で、明らかにされていることであり、ただ、それが、問題解決には及ばず、むしろ、結果的には、男性に職がなく、女性の能力も十分にはいかされず、若い人は結婚も出産もかなわず、少子化と高齢化は止まらず、人口減少が進むばかり・・・といった状況が続いているのである。
天声人語で、「子をもちたい人を後押しするのは当然としても、その流れを変える特効薬は見当たらない。いまどき“産めよ、殖やせよ”はありえないし、対症療法はあっても追いつかない。問題の根はずっと深いのだろう」と言っているがまさに通りだろう。
今問題となっている、年金問題、医療費問題等も同じだ。
汚い話だが、子供を産んで幸せを感じるにも、つまるところは、「お金のゆとりがあるかないか」・・・にかかわってくることなのだろう。
今、日本はデフレ経済からの脱却、名目3%以上の経済成長の達成などを目標にしたアベノミクスへの期待が高く、円安効果で、株価は急上昇し、輸出関連企業にいい影響が出ているので、このまま狙い通りに経済が上向いてゆけば、ひいては、サラリーマンの雇用や給与アップも改善され、それが、少子化問題をはじめ日本の諸問題の改善にもつながってゆくのだろうが、「早くも息切れを示し始めた」・・・と警告を発するエコノミストも現れ始めた(※9参照)。
もし、失敗すれば、そのつけは・・・、などと考えるとゾッとする。
将来生まれて来る子供達に大きな付けを残さないようぜひ成功してもらいたいものなのだが・・・・。

(画像は、重要政策課題について発言する野田自民党総務会長。参考※2より借用)
※1:朝日新聞デジタル:天声人語
http://www.asahi.com/paper/column.html
※2:野田・自民党総務会長との懇談会開催 - 日本経済団体連合会
http://www.keidanren.or.jp/journal/times/2013/0411_03.html
※3:世界一を目指していきたい〜成長戦略の策定に向けて(首相官邸)
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seicho_senryaku2013.html
※4:“ウーマノミクス(女性経済)”が日本を変える - NHK クローズアップ現代
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_2983.html
※5:総務省統計局・統計データー
http://www.stat.go.jp/data/index.htm
※6:時事ドットコム:【図解・経済】完全失業率と有効求人倍率(最新)
http://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_eco_jobless-rate
※7:希望子供数とは - 人口統計学辞書 Weblio辞書
http://www.weblio.jp/content/%E5%B8%8C%E6%9C%9B%E5%AD%90%E4%BE%9B%E6%95%B0
※8:内閣府>共生社会政策》少子化対策
http://www8.cao.go.jp/shoushi/index.html
※9:早くも息切れを示し始めたアベノミクスマジック
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-1f0c.html

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